赤い靴履いてた女の子と詠う童謡でご存知の「きみちゃん」がいる十番パティオ。
その広場に面して、細かな格子が繊細な表情をみせる「もち玉」という和食店があります。
そして、その「もち玉」の階下にあるのが、
Bar「tellus」。
気がつけば、5年振りのお邪魔です。
階段を巡って、右手のドア。
すっと開けば、比較的ゆったりしたフロアにカウンターとバックバーが浮かぶ光景が目に映ります。
そうだ、前回はL字になったカウンターの右隅に座ったんだとすぐに思い出す。
今夜はその逆の左隅を止まり木としましょう。
メニューに挟まっていた縦長のカードには、
香りのミストを楽しむ「MIDORI×MIST(ミドリ アンド ミスト)」とある。
「MIDORI」といえば、バックバーの片隅でちょこちょこ見かける、その名の通り鮮やかな緑色をしたリキュールだ。
でも、どちらかというと、あるカクテルの色づけや風味づけとしての出番をじっと待っている健気なヤツという印象のする。
そうそう例えば過日、Bar「HIGH FIVE」で上野さんからいただいた「トップ・スクープ」を思い出す。
そんな、名脇役という立ち位置の多い「MIDORI」にスポットを当てるのが、「MIDORI×MIST」なんだね。
ここでいう”ミスト”とは、クラッシュアイスを使ったグラス、という意味ではなくて、 まさに”霧”の”ミスト”。
「MIDORI」とパイナップルとで構成したパインフィズのロンググラスに、ミントの香りを掛け合わせるプレゼンテーション。
グラスの縁に広がった細かやかなミストを眺めつつ鼻先を近づけると、さわわとミントの爽やかな香りがする。
その香りはグラスの中の滴を口に含んでも続いて、その次の瞬間にパインの仄甘い風味が広がってくる。
そしてその真ん中から「MIDORI」のメロンフレーバーが湧き上がってくるという。
香りと風味の三層三段活用が「MIDORI×MIST」なんだ。
ミストをココナッツにするとまたその三段活用がよりふくよかに愉しめる、
そんな感じ。
ゆったりとしたバーカウンターに萌黄色のロンググラスがよく映えます。
ドライフルーツを齧りながら、ココナッツ、パイナップル、メロンと三段活用していると緩んだ気分がさらに解けるンだ。
色鮮やかな「MIDORI」のメロンフレーバーをおよそ「MIDORI」のまま愉しんだらどうかしら?と思う淑女には、「MIDORI×トニック」という手もある。柑橘の果肉を搾れば、「MIDORIリッキー」だよ。
もう一杯だけいただいちゃおうかなぁと思った時に、階段の上に立て掛けてあった黒板を思い出した。
確か、2007年カクテルコンペティションに全国三位入賞したというカクテル「アップルパイ」を紹介するもの。
そのグラスをとお願いすると、グラスの底に入れた林檎をガシガシと砕き始めるマスター。
大振りなシェーカーを振る中身は、その林檎のペーストにベースのウオッカ、色留めのレモンジュースにオレンジジュース少々のレシピ。
最後にシナモンをトッピングするのが肝で、それで「アップルパイ」の出来上がり。
口に含んで思わずマスターにニンマリ笑顔で応えてしまうのは、なるほどその名の通り「アップルパイ」の絵が脳裡に浮かんじゃったからなンだ。
十番パティオに面するこのビルの地階にカウンターを置いて7年ほどになるという、
Bar「tellus(テルス)」。
柔和な杉山さんがほとんどおひとりで客たちを迎えてきたカウンターは、5年振りなのにひと月振りのような気分にすっとなれた。
また、ふらっと寄ればきっと同じ佇まいで迎えてくれる。
今度は、〆にドライカレーをいただく所存です(笑)。
□今回企画の関連サイト
Suntory「恵比寿 麻布 青山のカフェ バー特集」
□関連記事:
Bar「tellus」で ラ・フランスのカクテルにウオッカヴィボローヴァ(05年09月)
麻布十番・和食「もち玉」で 焼きなす〆さんまいももちそぼろの煮(06年09月)
BAR「HIGH FIVE」でカカオ風味の協奏モーツァルト・リキュール(09年12月)
「tellus」
港区麻布十番2-2-8 E高林ビルB1
[Map] 03-3454-0555
http://bar-navi.suntory.co.jp/shop/0334540555/index.html
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