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武蔵野うどん「茂七」で 肉汁うどんその剛性と量感のアルデンテ
東大和市という行政が、都下の一角にある。
そう認識はしていても、それはどこ?と訊かれると、小平の向こうというか、多摩湖のむこうというか。
そして、西武線に「東大和市」という駅がある。
そのことに初めて向き合うことになったのは、東大和市駅を最寄りとする武蔵野うどんの店があると聞いたから。
新宿線から拝島線に直通する電車に乗り込みました。初めて降りる、東大和市駅。
駅前を通る緑道のすぐ脇にあるのが、東京で唯一、芥子の花がみられるという都立薬用植物園。
その壁に沿って南に下った先にあるのが、武蔵野うどん「茂七」です。
L字のカウンターが開けっ広げな厨房を囲む、潔い印象の店内に釜の湯気が立つ。
飄々としながら可愛らしい愛想のオバチャンが迎え、その背中でちょっぴり気むずかしそうなオヤジサンがうどんをシメています。
品書きも潔くって、「肉汁かけうどん」「かけうどん」と「肉汁うどん」「もりうどん」の4品のみ。
武蔵野うどんの目線からいけば、おのずと「肉汁うどん」でということになります。
大盛りでお願いしました。
オバチャンからお盆を受け取ってまずびっくりなのが、その麺の太さ。
世に矢鱈太っというどんはあれこれあるだろうけど、武蔵野うどんの系統で、こんだけ太いのは今のところ他に知らない。ほえ~と思いながら、割り箸でひっ掴むと、その剛性と量感にたじろぐくらい。
数本の束を啜るというよりは、一本をしっかり挟んで、もぐもぐモグモグする感じになる。
つけ汁は勿論、豚肉の浮かぶヤツ。
バラ肉というよりはロースに近い部位なのか、脂控えめながら葱もたっぷり浮かんで悪くない。
そこへ、鷲掴みした掌で絞った雰囲気の山盛り大根おろしやおろし生姜を適宜ぶち込んでさらに、もぐもぐモグモグ。
入れ放題の揚げ玉を使っちゃう手もあるぞ。
いやぁ、それにしも噛み応えのあるうどんであります。
1cmを越えようかという幅のうどんの断面をみるとこれが、ごっついアルデンテ。透明を帯びない、粉の凝縮が明らかにあって、なるほど、啜るに適わない麺の力強さの源は、ここにある。
味噌煮込みうどんの手強さに量感を加えた感じ、といえば伝わるでしょうか。
柔らかく湯掻いた、所謂「糧」を挟みつつ、大根おろしをさらにつけ汁に投入しつつ、食べ進む。
ふう、オバチャン、なかなかに満腹になったよー、ご馳走さまー。
するとオバチャン、「梅干し、食べてって」。
それが、すっごく塩辛いのでありました(笑)。
朱のうどん鉢の底に名を示す、東大和の武蔵野うどん「茂七」。ボクが思う”武蔵野うどん”と比べると、「茂七」のうどんは異端にあるということになる。
でも、ふと思い出して足を向けたいと思うこともありそう。
あのオヤジさんが、茂七さんなのかなぁ。
「茂七」 小平市小川町1-406-3 グリューネワルト1-C [Map] 080-3471-1385