大井町駅の中央口では、かつての大井町阪急のビルなどが解体され、広く仮囲いの壁が立つ。
その左手へと進んで、三ツ又の交叉点方向へだらだらと坂を上がったところで、隅切りに入口を構えるお店が目に留まりました。
何気なくメニューを見ると、「煮ぶたニンニクたまご丼」なるイチオシがある。
ガッツリ喰いたい気分が手伝ったのか、へーと云いながら、気がつけばそのままドアを押していました。
どれどれと蕎麦を啜るかのような要領でズズとすると、しっかり旨味を含んだ鶏スープと生姜の風味が啜るもずくと違和感なく、なははは、これはこれでイケる。
もずくの食感が多少ぽそぽそしているのは、温かい仕立てにしているからなのか、そもそも東京で仕入れられるもずくはこうなってしまうのか。
「銀座わしたショップ」で買ったもずくは、冷たいままでもぽそぽそしていたし、やっぱりそりゃ取れ立てと同じにって訳にはいかないよー、ってことなのかな。
そふいふことなら(?)ってことで、目の前の泡盛の瓶に手を伸ばす。
まず舐めるは、沖縄最古の酒蔵の醸すという「かりゆし」。
それに添えるにはと選んだのが「ターンム(田芋)の甘辛揚」。
うんうん、田芋の素朴な甘さが薄い揚げ衣に包まれて、強過ぎない甘辛のタレがその味わいも膨らませてる。
だんだん田芋の料理に馴染んできた気がするぞ。
一方のラベルは、ああこれぞ泡盛のラベルと思わせる昔ながらのデザインの「久米仙」。
もう一方のラベルは、水の流れに木々の花をあしらった、やや気取ったデザインの「久米仙」。
デザインは違ってもどちらも同じ蔵元から出ているものかと思ったらそうではなくて、素朴系ラベルの久米仙が「久米島の久米仙」で、片や那覇にある久米仙酒造の「久米仙」。
それぞれに沿革があるのだろうけど、なんとなく「久米島の久米仙」の方が正しいような気になって、そちらを舐める。
うんうん。
すると、「こっちも呑んでみる?」と試し呑みさせてくれた。
うんうん(笑)。
これはもしや、こちらの女性店主が沖縄出身の方なのではと訊けば、そうではなくて、関係者と等しき親しいお客さんに沖縄料理を薦められるうちに、こんな風に沖縄色を帯びたお店になったのだという。
だから、家庭的居酒屋メニューの間にちょこちょこと沖縄酒肴が混じる、ちょっと不思議な品書きになっているンだね。
あ、そうだ、ガッツリものを食べに此処に入ったンだっけ、とやっと思い出して「煮ぶたニンニクたまご丼」をお願いします。
背筋を伸ばして(笑)、箸を持ち直して挑めば、襲う強烈なニンニクの風味と辛み。
解けるように蕩けるように、豚肉の脂の甘みと旨味がそこへ踊り出して、さらに玉子の黄身のコクがズルいほどの拍車をかける。
うー。
ガツガツ喰っちゃって、満腹至極であります。
一升瓶の並ぶカウンターで、食事だけでもいいし、沖縄ツマミで泡盛も呑める、
大井町・三つ又「AiR BoRNE(エア・ボーン)」。
窓際に横に渡した板に、上昇気流に乗って!!エア ボーン、とある。
“Air Borne”というのは、主に航空関係者の間で使われる言葉だそうで、飛行機の”離陸”を意味するのだそう。
あ、それで上昇気流に乗ってだ、Takeoffとは云わないンですねー、などと話していたら、女性店主がこう洩らした。
息子がパイロット見習い中なんですよ、と。
なるほどね。
「AiR BoRNE」 品川区大井1-55-3 [Map] 03-3772-1004
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