魚料理「駄々屋」で 新子鯖白子焼イナダ漬丼オトナな駄菓子屋

dadaya.jpg俗に云う病院口から駅を出て、中原街道に突き当たる旗の台信号から昭和大病院前信号までRを描いて中原街道と並行して走る筋がある。 ぽつぽつと散在する飲食店が、通る度にきょろきょろと気になりつつ、なかなかお邪魔できないでいます。 今夜はふとそんな気分になって、 その中の一軒、魚料理「駄々屋」で一献です。
dadaya01.jpg縄暖簾の脇にメニューが掲示してあって、「謹製○月○日献立」とその日の日付の入った品書きは、鉛筆でレポート用紙に手書きしたもの。 今日はこんなところが入ってますよーというメッセージが、 ちょっと微笑ましく伝わってきます。 と同時に、提供する魚はすべて天然魚で、養殖魚、冷凍物、化学調味料は一切使用しないと心意気も示してる。 ドアを引くと右手に厨房との間を仕切るカウンターがあって、その先に小上がりが見えます。 奥にひと組の先客があるようで、素直にカウンターの隅に陣取りました。 ビールを所望してから、 外で眺めた品書きで既に気になっていた「〆コハダ(新子)」をと追いかけます。 合言葉のように「もう新子ですか~」と訊くと、唐津からだというコハダは既に「ちょっと大きいですね」という主人。 角皿を受け取れば成程、にぎりに三枚づけ四枚づけするような新子とは型が違う。dadaya02.jpgどれどれと山葵をちょんと載せて口に含むと、〆の塩梅に遜色なく、すいっと軽く解けるように消えていく感じがいい。 嫋やかな印象が新子らしいといえまいか。 会話の中で、市場に通っているのでしょうけど築地まで?と訊くと、「いえ、川崎の南部市場で仕入れてます」という。 尻手辺りの一号線沿いにある小さな地方市場だそうで、築地の分店のようなものなので、基本的には築地とほぼ同等のものが揃うそう。 卸が専門化しているため、何軒もの卸を巡る必要がある築地に対して、あれこれが同じ卸でコンパクトに揃うので、お店との距離も含め都合がいい、というのはよく判るお話。 同じく外から気になっていた、「生シラスと新玉葱のかき揚げ」もいただいてみる。dadaya03.jpg細やかなかき揚げを想像していたら、仕立ては少々フリッターっぽい。 新玉葱の甘さの間隙を縫うようにシラスの風味が過ぎる、そんな食べ口だ。 dadaya04.jpg 改め眺める品書きで、へ?と思わせたのが三重産「サバ白子焼き」。 鯖の白子って、食べた憶えがないもんね。 dadaya05.jpgアルミホイルに包んで焼いてくれた鯖白子は、河豚や鱈のものと違って大振りで平たい表情。 口にすれば、あはは、鯖らしい風味と濃縮した白子の滋味がする。 見かけはどこか珍味っぽいけれど、もしかしたら他所では始末してしまうような部位を安くて実直な酒肴に仕立ててくれている。 こりゃお酒だ!と今月おススメのひとつから秋田の純米吟醸「白瀑(しらたき)」。 県産の美山錦と花こまち酵母を白神山地の天然水で仕込んだ秋田づくし、と解説してくれる。 妙なひっかかりのない華やぐような膨らみとコクがすっと潔く消えていく。 ご主人、随分と呑み込んでいて全国あちこちのお酒を薦めていきたいのけど、選ぶお客さんの方が圧倒的に北の方の酒を選ぶので、想いとは裏腹なことになることが多いのですと苦笑い。 例えば高知とかでも佳いお酒ありますもんねと云ってみたものの、今選んだお酒は秋田モノだったりする。 どうも寒い方のお酒の方がいいのじゃないかという深層心理が自分にも働いているのかもしれない、気をつけよう(笑)。 小物ばかりですいませんがと詫びつつ「ワラサ アラ煮」。dadaya06.jpg鴨川産だというワラサのアラをこっくりと煮付けた、これまた珍味っぽい酒肴。 骨を除けつつ、歯でこそげるようにして、吟醸をついーっと舐めると一丁前の酒呑みの気分になってきます(笑)。 早くも出来上がりつつあることに気がついて、〆に「本日の漬丼」を訊ねます。 dadaya07.jpg「今日は、イナダです」「じゃ、それに、味噌汁つけてください」。 ワラサもあればイナダもあるのね~、と思っているところへドンブリが届きます。dadaya08.jpg〆に加減のいい小ドンブリを茗荷と葱をいただいたイナダのヅケが覆ってる。 どちらかと云うとさらっと白身っぽいイナダの身を茗荷の香気とで品よくいただく感じ。 うんうん。 ふとワインの話になって訊いてみると、なんとこちらのご主人、フレンチの出身だという。 帝国ホテルと並んで日本のフレンチの本流をなす処で経験を積んできたのだそう。 時々、その片鱗を品書きの一行に含ませることもあるけど、かといってワインも並べるような状況ではないので、その辺りはきっちり切り替えができているのが潔い。 昭和大学病院のドクターも忙しさの間を縫って来てくれるという、 魚料理「駄々屋」はこの6月で三周年。dadaya09.jpg駄物と呼ぶには語弊があるけど、魚介の、活用できてきない部位や端物も大事に提供していきたい。 気取らず構えず、それら酒肴を求めてお客さんが憩う、オトナの駄菓子屋でありたい。 そんなことから、「駄々屋」と名付けたのだそう。 珍味志向ってこととではないものの、自家製の塩辛とか莫久来とかもあると嬉しいな。 平日は、ランチも営っているようです。 「駄々屋」 品川区旗の台2-1-8 [Map] 03-3788-9010
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