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欧風料理「ムッシュ」で カキフライ仕立てはソテーか空揚げか
市場通り沿いの、云わば築地駅上にありながら今まで一度もお邪魔したことのなかった、欧風料理「ムッシュ」。
瓦屋根を頭上の壁に置いたファサードは、
古き喫茶店的デザインだ。
そして店内もそんな風貌通りの佇まい。
コテ仕上げの壁がくすんで、そこそこに使い込んだ木製椅子とよく馴染んだ光景をみせている。
そうそう、店前の路上で見つけた自転車のフレームの間にも「欧風料理ムッシュ」の文字。
周囲に浮かんだ錆が味わいを生んでいます。
この時季のお目当てはやっぱり、「カキフライ」。
ポタージュとライスとのセットにしてもらいましょう。
この日の「ムッシュ」のカキフライは、あまり余所では見掛けない、異形にも映る。
パン粉控えめというか、ケチっちゃったというか。
小麦粉はたいたソテーとフライとの合わせ業ような、不思議な仕立てになっているンだ。
火はちゃんと入っているものの、齧る食感も衣ののっているところとそうでもないところがあって、
空揚げのようでもある(笑)。
少なくとも軽快な衣の喜びは望めず、カキフライとしては如何なものかということだけど、口にしている牡蠣の身ふっくらとして、不味いかというとそうとは云い切れない妙な魅力もある。
でもね。
ちょっと前にいただいた時のカキフライは、衣がガリカリっと主張する奴だったンだ(笑)。はてさて、どちらの揚げ口が「ムッシュ」本来の「カキフライ」なのでしょう。
いつ貼られたのか、店頭の硝子で色褪せ始めた雑誌の切り抜きには、
既にその時点で20数年前にオープンしたとある。
そうかそんな前からあるのだね、の欧風料理「ムッシュ」。観光地化した市場はどこ吹く風と淡々と肩の力の抜けた日々を送ってる、そんな風情を思います。
「ムッシュ」 中央区築地3-10-10 [Map] 03-3541-9020