祇園の切り通し。
周囲に溶け込むように建つ狭い間口の一軒は、
格子に瓦屋根。
京町家の表情を認めながら眺めると、左手の柱に表札が掛かっているのに気がついた。
誰ン家?と近づくとそこには、表札にはおよそ書かれないであろう摩訶不思議な一節がある。
“コペルニクス的転回”、……??
太陽中心説を唱えた天文学者末裔の棲家、ということではどうやらないようで、この佇まいにして実はバーだというのです。
物事の見方が180度変わってしまうような世界がこの格子の奥にあるというのでしょうか。
おずおずとその先へ踏み入りましょう。
和のエッセンスを残しながらも、10席に満たないモダンなカウンターが暗がりに浮かぶ。
その中央に陣取って、カウンターの主と正体します。
まずは、卓上で目に留まった「BOWMORE 12年」をトゥワイスアップで。
呑み口とイメージが一致する、うん、安堵なグラスだ。
二杯目をときょろきょろしているところへ差し出されたのが、
ラベルの背景に”京”と筆文字で描かれたボトル。
ラベルのヘッダーにはさらに、“A Special Bottling for KYOTO”と記されている。
ボウモア「Kingsbury’s ISLAY 14年」の樽を買い付けてボトリングしたという、いわば京都発のボトラーズもの。
ラベルの下部に、1992年の蒸留、2007年のボトリング、カスクのナンバー、そして総ボトル数などが記されています。
ストレートで舐めると、バーボン樽の香りがフンとしてとろんとした甘ささえ思う。
円やかな中にシンの強さを感じて、いやはや、面白い。
京都にはこんな粋なことをする御仁たちもおられるのだね。
ガツンと利いちゃった酩酊の足取りで振り返る佇まいは、やっぱり誰かン家。
バーとは告げずに誰かをお連れしたい。そんなイタズラ心が芽生えます。
物事の見方が180度変わることがあるかはさておき、ちょっとした発見はあるかもしれないぞ。
「コペルニクス的転回」 京都市東山区切り通し末吉町下る東側 祇園切り通しビル1F
075-541-5767
http://apnp.jp/shop/kope/index.html
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