帰りがけにふと思いついて、根津まで。言問通りから折れ入ったひっそりとした筋に、ちょっと不釣合いなモダンな灯りを映す建物は意外や老人ホームらしい。その奥の一角にある石蔵が目指す「釜竹」です。外装に煉瓦を廻した、明治43年築だという蔵
に沿って進むと、一転抜けのいい硝子で構成されたお店の様子が窺える。そして店内右手の階段を登れば
、蔵の中でも食事ができるってぇ寸法になっているのです。お品書きに、蕎麦前ならぬ麺前酒と記された行をみつけるともういけません。「紅豆腐」と題された豆腐よう一品
を酒肴にグラスでいただく山口の純米大吟醸「東洋美人 一番纏」。すっきりした中に上品な甘い香りが抜ける、旨い酒だ。呑み干したところへ、ふん!と出汁の薫りが一閃。高さ30cmはあろうかというツボ
に熱々の出汁つゆが入っているのです。ぴかぴかとした湯掻き立てのうどんは、どんぶりになみなみとそよいでいる。ツボのひもを支えながら倒して注いでもらったつゆの器に、そのうどんを誘うように移して啜ります。むほほほぉ。どちらも熱々のめんとつゆ。噛み応えも口滑りも、なんというか、妖艶とでも云いたい艶かしさのうどん
にきりっとしながら旨味と薫り溢れるつゆ。一種の興奮状態のまま半分まで一気に食べ進み、薬味の葱を追加してさらに後半も一気啜り。これもひとつの口福ってやつかもね。こうなると、太打ち、細打ちの「さるうどん」も気になります。
「釜竹」
文京区根津2-14-18
[Map] 03-5815-4675
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