
根津駅降り立つ不忍通り。
いつぞやお邪魔したバー「根津BAR」の路地をちらっと覗いて、もうちょと往くと根津神社の信号に下になる。
信号を渡って右手の裏道に入り込めば、魚菜「根津 呼友」がある辺り。
左手に足を伸ばせば津軽料理の「みじゃげど」だ。
その信号を根津神社、本郷通り方向へと忍び込むと、どこか凛とした表情で佇む讃岐饂飩の店「根の津」が見つかります。

暖簾を払って、重いような軽いような不思議な手応えの引き戸を開くとそこは、
小じんまり具合が心地良さそうな空間。
入れ込みの六人掛けのテーブルの隅に場所を得て、お品書きを眺めます。
そんな気分で、久し振りの芋の「山ねこ」。
水割りにしてもらって、肴を所望します。
ビールにも似合いそうな「根の津風キツネ焼き」。


納豆と豆腐にベーコンを巾着にして焼いたもの。
パリパリクシュっと囓ると、
お揚げの芳ばしさと納豆の風味が交叉して、美味い。
ベーコンの塩っ気もいい感じです。
「蛸バジル」かなんかで、水割り「山ねこ」もグラスを呑み干したところで、
お願いしていたうどんの準備にかかってもらいます。

お願いしていたのは、「肉つけ麺」。



どうも武蔵野うどんの習慣が染み付いていて、
そんなことになりがちな自分が微笑ましく(笑)。
三つ葉を浮かべたつけ汁には、
バラ肉のみならず、刻んだ茄子なんかも仕込まれています。
そしてなにより、うどんの艶やかさが美しい。

「エン座」のうどんの艶かしさが印象深いけど、どっこいこちらのうどんも負けてない。
生命反応があるかのように滑らかにちゅるんと口許を滑る。
バラ肉の脂のコクにも負けない粉の風味が直球で届く感じ。
いいね。
そんなこんなで裏を返すようにふたたび根津神社の参道辺り。

偶然同じ席に案内されて、今度は黒糖の「朝日」を所望。
ツンと粋な辛さが鼻を抜ける、安曇野産「葉わさびおひたし」でチュルチュルと。
これまた麦酒にも合いそうだなぁと「煮干しの天ぷら」。

硬い歯触りをちょっと覚悟していたら然にあらず。
さくっと柔らかな調子で、口に含む旨味と風味はまさに煮干しのそれであります。
さて、「おうどんを」と声を掛けて届いたのは、
「根の津」のスペシャリテの釜あげうどん、「釜めんたいバター」。
トッピングは大葉に海苔に明太子。

あつあつのうちにエイヤとばかりに掻き回す。
立ち昇る湯気に明太子に海苔の匂いが混じります。

しっかりと明太子のソースを纏って、艶やかさとはまた違う妖艶な表情になる。
うんうん、明太子スパ とは 非なる食べ口の。

バターの風味をもっと利かせようとするとクドくなっちゃうかなぁなどと考えつつ、
またズルズズと啜る。
終盤戦になったら粉チーズなんて振ってみたりするのも一手であります。
根津神社の参道の讃岐饂飩の店の名は「根の津」。

小粋な蕎麦屋に通じるようなささやかな昂揚感を想わせる、
意外と稀有な存在のうどん店なのかもしれません。
釜揚げうどん「釜竹」と此方「根の津」。
根津界隈にうどんの佳店が並ぶのにはなにか訳でもあるのでしょうか。
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「根の津」
東京都文京区根津1-23-16 [Map] 03-3822-9015
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