肴・酒処「那由多」

nayuta.jpgこんなところにお店があったのね~と口をついて出そうな裏道にある「那由多」。営業開始時間を確認しようと連絡を入れると、そんな問い合わせを受けることは稀らしく、「いや~、どちらで知られました?」とご主人。定時より早くても開けてくれると云う。お知らせした通り、まだまだ昼下がりの明るさの残る夕刻にお邪魔してみました。きちんと縄暖簾が下がり、突き当りの小上がりに準備がなされていました。ジョッキを干していると、鮎の塩焼きが届く。「連絡いただいて嬉しかったんで、サービスです」と。いやはや、恐縮です~。まずは、カナダ産ではあるけれどもおススメだという、「馬刺し(極上)」。馬肉のクセのない香りと適度なサシが澱みなくすっと解けて、なるほど旨い。「栃尾揚げ」とは?と訊ねると、新潟・栃尾の名物であるところのジャンボ厚揚げなのだという。確かに、関東で普通に見かける厚揚げの、面積にして凡そ1.5倍、厚みが2倍ほどもありそうな厚揚げだ。軽妙さが身上のようで、外側のカリリとした食感がいい。お酒に切り替えて、まずは「越乃寒梅(無垢)」。端麗でありつつ、ふくよかで高貴な香りと味わいだ。「アジ刺し」「つくね」と続けて、また楽しそうな酒肴を見つけた。「そば岩っ子揚げ」。ちょうどそばがきをそのまま揚げてしまったような感じで、ころころとした小石のような、まさに”岩っ子”な風情なんだ。「ごぼう踊り揚げ」はといえば、長く長く刻んだ牛蒡を折り重なるようにして素揚げしたもの。こいつはビールにもよく合いそう。そして、お酒を「おやじ」に変えて「ホヤ」「酒盗」「ポテト黄金揚げ」。さらに呑ン兵衛路線へと舵を切るのですな。 「那由多」のご主人は、すっかり高じていた酒と肴へのこだわりを定年後周囲の勧めもあって形にして、自らのお店を開くに至ったんだそう。立地から客寄り具合が心配になるものの、ワサワサと混み合うことはないけれど、常連さんがついてくれているのでお茶挽くような日はないそうだ。ひとりですべてを賄っているので応対が後手に廻ることもあるけれどどうぞ容赦ください、と認めた貼紙がある。なんか、実直さが伝わってくるよね。店名の「那由多」は、”10の60乗”を示す単位「那由多」からではなくて、やっぱりあの蕎麦焼酎から由来しているんだそうです。 「那由多」 所沢市東町21-2 04-2925-0115
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