あずさ号へと乗り込む外国人の姿を見掛けるのもすっかり定番となりました。
2019年3月のダイヤ改正で、かいじともE353系車輌に統一され、塩山駅、山梨市駅、石和温泉駅を通過することを含めて、松本までの下り列車の平均で6分の所要時間短縮を見込んでいるという。
それに併せて、聞き慣れた「スーパーあずさ」の列車愛称名を廃止したそうだ。
松本駅の驛舎を背にしておよそ真っ直ぐ歩いてゆくと、
何故かその入口に立っていることになる高砂通り。
何時ぞやの蕎麦処「源智のそば」は、
豊かな水の流れに沿う様にゆけば辿り着く。そんな高砂通りを左に折れて離れて、
蔵の在る街並みが粋な雰囲気を醸す中町通りへと向かう。
すると、これまた何時ぞやのカレー店「デリー」が角に見えてくる。
お邪魔したのは、松本で夙に知られた御そば打處「野麦」。食事のメニューは「ざるそば」に「かけそば」。
他には冷酒に燗酒、焼酎のそば湯割などがあるだけという潔さです。
何故だか清らかな水に晒した様子を髣髴とさせる笊の蕎麦。あくまで細い蕎麦切りは不揃いなく端正な面持ち。
箸に載せたそれは、繊細さの中に芯の強さがあるような。
特注品と思しき笊が機能的にして美しい。品書きの隅に記された一文によれば、
戸隠の渡辺さんと仰る方の作であるらしい。
「野麦」初訪問から彼此二年。
ふたたび高砂通りから中町通りへと回り込むように歩く。
蔵の在る中町通りをプチ散策して、
例の「デリー」の店先を眺めて異変に気づく。
ドア硝子の貼紙には、
創業来47年に亘る厚情への感謝の念が綴られていました。
この日は入口脇の入れ込みのテーブルに席を得られた。欲張って「ざるそば」と「かけそば」それぞれ一人前をとお願いすると、
ならば「ざるそば」を先にお出ししますね、とご主人。
早速辛汁の徳利や薬味、
そして切り干し大根の載った小皿が用意されました。
改めて見遣る「ざるそば」は、実に端正な景色出汁のよく利いた決して辛過ぎないつゆに、
素朴な蕎麦の甘さが引き出されるようで、
素直に美味い。
「かけそば」のどんぶりには、五つの具が載る。炙って刻んだお揚げに煮付けた椎茸、
湯通しした菠薐草に海苔、半裁の煮玉子。
甘汁はあくまでも澄んで、それでいて淡々と旨味を湛える。仄甘い滋味や風味、喉越しといった蕎麦そのものの魅力は、
確かに「ざるそば」でこそ味わえるものだけど、
「かけ」の蕎麦の、ちょっとゆるっとした辺りにもまた、
ほっとさせるような別の魅力もあると思うのです。
松本は蔵の在る街中町通り近くに御そば打處「野麦」はある。時に混み合う人気店にあっても、
四人掛けのテーブルが三卓とこじんまりとしているのが、いい。
小さな店内に流れる時間がゆっくりとしていて、
自ずと目の前の笊やどんぶりと素直に向き合うこととなるのです。
「野麦」
松本市中央2-9-11 [Map] 0263-36-3753
http://nomugi.o.oo7.jp/