そうかそうかと顎鬚を撫でながら(笑)、辿り着いたのは、 ご存知「泰明庵」の暖簾の前です。
がらがらと引き戸を開けると、湯気で眼鏡が曇る。 オヤジさん達をはじめとする先客さんたちに混じり入るようにご相席をお願いします。 丸く削れたテーブルの角が味わい深い。眼鏡の曇りがすっかり晴れると同時にお願いするのは、勿論、「かき南そば」だ。
甘い葱と牛蒡の笹掻きと一緒に牡蠣の身を口に含む。 つるんとぷりんとした歯触りを追い掛けて、如何にも牡蠣らしい滋味が口腔に広がる。 そこへちょっと辛めの汁を啜ると、これがまたいい按配のまま胃の腑に滑る。
今度は御本尊の蕎麦と一緒に牡蠣の身を。嫋やかな粉っぽさが魅力の蕎麦と牡蠣との相性やよろし。 そして、ああ、温まる。
昼なおキリっと冷え込んだ真冬日、ふたたび泰明通りを訪れました。 姐さんが珍しく、よろしかったら二階へどうぞというジェスチャーで迎えてくれる。 気がついたら昼も夜も一階ばかりで二階にあがったことがない。 それはそれはとちょっといそいそと(笑)、二階への階段を辿ります。 二階のフロアも一階に違わぬ、落ち着いた味な風情だ。
この日の目当ては、ずっと気になりつつもまだいただいていなかった「せりそば」。 二階担当の姐さんにそのように声を掛けると、「肉つけますか、今日はかしわのみなのですけど」と仰る。 はい、と応えると続けて、「根、つけますか、食べられますので」。 あ、では、そのようにお願いします。
青々とした表情でどんぶりを飾っているのは、言わずと知れた春の七草のひとつ。どれどれと覗き込むとなるほど、洗ってもなお土の色を少し帯びた白い根が添えてある。
やおら、割り箸をその芹の間に差し込んで、その下の蕎麦と一緒に手繰り上げる。 セリとセリとがキュッと鳴いたような気がする。 ああ、香しき青き春の息吹。
根のところは甘いようなほろ苦いような、不思議な魅力。こうして有難くいただくもが、当たり前で且つ正しいことのように思えてきます。 合いの手としての鶏肉も嬉しいね。
創業来半世紀にあまるという泰明通りの老舗蕎麦店「泰明庵」。 壁を飾る品札の相当数を占めている酒肴たちもそれぞれに、 その手もあるよと誘ってる。 まだまだ陽が落ちるには早い時間あたりにその中の幾つかを所望して、 盃を傾けたい。 ご隠居さん気分でもいいのかもしれません(笑)。
「泰明庵」 中央区銀座6-3-14 [Map] 03-3571-0840
column/03231
この界隈は懐かしいです。
☆
“ 泰名庵 ” にも入ってますが・・・
泰名小学校-正門右隣のビル(6~7階?)に
美味しいウオッカを呑ませてくれる
「ロシアン バー」 がありました。
*ウッデー調のインテリアで統一した店内でした。
↓
2~30年も前ですので、無くなったかもネ?
Re:ぽんちゃんさま
ロシアなバーはもうないっぽいですね。
泰明通りに「しぇりークラブ」ならありますけど…。
まずはぜひぜひ、久し振りの泰明庵で昼酒を (^。^) 。