富士街道沿いにあった「エン座」にお邪魔してからもう、三年が過ぎてしまいました。
再び訪れて、温かい田舎うどんなんかも所望したいなぁなどと思いながら、駅から遠いこともあって、なかなか果たせずにおりました。
そうこうしているうちに、
石神井公園の脇に移転したと聞く。
未だ駅からは微妙な距離なれど、
足を延ばして寄ってみましょう。
移転して、「むさしのエン座」となったお店は、「ふるさと文化館」なる施設の中にあるという。
石神井公園の池をふたつに分けるように新青梅街道へと抜ける通り沿い。
三宝寺池前信号の先に「ふるさと文化館」はありました。
今は、暖簾を分けた「エン座 長谷川」となっている以前の店の雰囲気から一転、
長く延びた庇が印象的なややモダンの建物の中。
「ふるさと文化館」は、区のWebページによると、練馬区で育まれてきた伝統文化の継承・発展および新たな地域文化の創造、観光振興を図る拠点として整備されたもの、だという。
明るい入口を入ると、ジオラマなんかが展示されたフロア。
そこに面して二種類の暖簾を掲げているのが、「むさしの エン座」だ。
ゆったりとテーブルを配した店内は満席で、人数を告げて待つことに。
ややあって、本棚(糧文庫)の前のテーブルへと案内されました。
ふと、店の奥よりの扉の先をみると、建物の裏手にもテーブルがあって、真冬というのにそこでうどんを啜っているひともある。
暖かくなった頃には気持ちいいかもね。
「おうどん」をお願いして、合わせて”武蔵野本流”と謳う「お団子」を。
しっかりと焦げ目を魅せる4粒の焼きだんごは、如何にも丁寧に丸められた歪みのない球形。
香ばしくいただくだんごの肌理も、如何にも細やかだ。
焼きだんごは、所沢の隠れた名物なのだけど、
ここまで精緻な仕立てのものではありません。
そこへ、おまちどうさまでしたーとご主人が、
「霙糧うどん」のお膳を届けてくれました。
いつぞやにも目を瞠らせてくれた、藤色と草色とを捩じったうどんがアクセント。
芸術的にも映るうどんの捩じれとうねるような量感。
じっくり炊いた印象の野菜根菜に刻んだ豚肉の浮かぶつゆに、
その量感を箸の先に感じながら浸して、啜ります。
うんうん、歯応えのコシというよりも噛む中にコクがあるという感じが素晴らしい。
全粒粉の茶色いつぶつぶが、より風味を運んでくれているようだ。
ふと厨房の中を覗くと、「地場産農林61号」と標した幟が横向きに掲げてある。
いま啜っているうどんも農林61号の粉によるものなのだろね。
茹で置き御法度、注文を受けてから釜入れする、つまりは茹で立てを信条とすることが、
ただただ旨いうどんのための心意気。
追っ掛けやってきた天ぷらは、「地野菜かき揚げ」。
“とうきょう特産食材使用店”を謳う「エン座」ならではの、
何気に滋味あるかき揚げです。
本日のうどん、81.8点。
暖簾の脇に吊るした日捲りカレンダーには、その日のうどんの自己採点を表明しています。
点数のあとに小さく書いた、”(笑)”が店主の心持ちを示しているような。
練馬の地にしっかり根を張った、本手打ち糧うどんの店「むさしの エン座」。
所謂武蔵野うどんとは違うキャラクターのうどんに思うも、
それはまさしくセンスある手練のなせる技。
お皿のあれこれ、店内のあちこちに店主の気持ちが顕れていて頼もしい。
店名「エン座」の由来は、車座の様に円く座る「円」、ひととひととのつながりの「縁」、
とふたつの「エン」。
そこには、武蔵野台地の一角、練馬の土地との縁も含んでいそうです。
「生うどん」を買って帰りましょう。
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武蔵野本手打うどん房「エン座」で むほほーの季節の霙糧もり(07年10月)
「むさしのエン座」
練馬区石神井町5-12-16石神井公園ふるさと文化館内
[Map] 03-3995-1577
http://www.udon-enza.com/
column/03076