でも、その呼称は一体どこからどこまでに適用されるものなのかしらんなどと思うことがある。
新大橋通りは、浜離宮の角と電通本社が挟む汐先橋交差点を起点として、そこから築地市場の脇を通って、隅田川を渡る新大橋へと向かう。
その先が意外と長くて、一之江の葛西工業高校前までが新大橋通りであるらしい。
まぁ”市場に続く道”のイメージで考えれば、
新大橋の手前の浜町までとか、
日本橋川を渡る茅場橋から築地側が、
“市場通り”と俗に呼ぶ相応しいのかもとも思う。
ずーーっと先に時が過ぎればきっと、
嘗てそこに大きな市場があったから市場通りと呼んだのだよ、
なんて訳知り顔で語るヤツが現れることになる、
なぁんて風にも思ったりもする。
そんな市場通り沿いの、八丁堀の舗道の隅に、
小さなA型看板が顔を出すようになった。矢印に促されるまま横丁を入り、
煮込みや「大福」の朽ちた看板を横目にしつつ往くと、
その突き当たりに黒いファサードが見える。
それは、日が暮れてもなお、
脚立に跨って作業中の職人の姿を認めた場所。
それは確かついこの間まで、
小さなビストロ「TOUT(テュー)」であった場所。それはまだ梅雨も盛りの頃、
開店を祝う花が飾られていました。
窓硝子を飾る酒壜の、所々に配した緑が色を注す。テーブル3卓にぎゅっとつめた3席のカウンターと、
「TOUT(テュー)」の頃から勿論、広がる筈もない小さな空間だ。
ふた品が白墨で書かれた黒板から、
まずはと「中華そば」を選ぶ。淀みない旨味が真っ直ぐ届く、
脂の程度もスープとタレの濃さとのバランスも、いい。
そんなスープをよく持ち上げる麺との取り合わせも文句なく、
どこかのお手本のような一杯だ。
後日店先のメニューを覗くと、過日とは別のふた品が並んでる。
週替わりで色々なラインナップを繰り出すスタイルなのかもねと、
独り語ちつつ選んだのは、
秋刀魚、鰯、飛び魚の「3種の煮干の中華そば」。銀鱗浮かぶニボニボとは違う、
澄んだ中にぐぐっと複数の煮干の旨味と風味が籠もっている。
ふと新馬場にあった「東京いまむら」のどんぶりを思い出したりします。
また別のおひるはサンマ出汁ベースの日。
「中華そば」に並んで「燕三条らぁ麺」がある。チャッチャした背脂にざく切りの玉葱。
なんちゃって燕三条と思わないこともないけれど、
海苔の風味もいいアクセントの悔しい哉なかなかの完成度であります。
そうかと思えば今度は「熊本らぁ麺」なんて日もあった。豚骨系スープにマー油浮かべりゃ熊本ラーメンかいなと、
斜構えになりつつもテンポよく平らげてしまう自分に気づきます(笑)。
時に強く降る雨の中をやってきて、
「謙二郎らぁ麺」を所望した日もあった。“野菜たっぷり醤油”との副題あり。
今度は二郎インスパイア系かいなと鼻白んでみせたりするも、
トッピングの醤油漬け大蒜にそのエッセンスを漂わせつつ、
荒ぶるような二郎のノリとは一線を画したヤツでありました。
謙二郎って誰やねん(笑)。
麺酒場「まがり」が八丁堀の裏通りで存在感を増してきた。店名「まがり」の由来を訊ねたら、
八丁堀に移転する前の葛西では、
とあるバーに間借りするようなスタイルで営んでいたからという。
そう聞いてふと「つぼ八」の店名の起こりに似た、
そのまんま感ににんまりとするのでありました。
「まがり」
中央区八丁堀2-28-9 [Map] 03-6222-8873