昭和46年に開業したというニュー新橋ビルは、つまりは45歳ほど。
オリンピックの頃には、昭和の後半から平成までの半世紀を眺めてきたビルになる。
昭和の空気どころか戦後の闇市の残り香さえも思わせるような独特の風情を孕んだニュー新橋ビルに対しても再開発の動きがあるらしい。
耐震や防災対策の必要性は否定できないけど、あちこちでみられる古き良き建物の解体には、遣る瀬なさを想うばかりであります。
そんなニュー新橋ビルの裏手、週末の烏森通りは、
駅方向へ向かうひと達とそれとは逆に、
新橋三丁目辺りの店に向かうであろうひと達が、
行き交い擦れ違う賑やかさ。通りを照らす看板のひとつに、
今宵の止まり木、炭の屋「でですけ」の文字を見つけました。
案内されたのは、先客さん達の間を擦り抜けた先のカウンター。頭上には、焼鳥屋の佇まいを表す行燈が浮かんでいます。
口開きの麦酒をバーニャカウダ的お通しと、
「鶏のポテトサラダ」でやっつける。粗くマッシュしたタイプではなくて、
しっとり滑らかにさせたタイプのポテサラだね。
ここでメニューから選んだは、
今夜のお題”日本ワイン”のひとつ、
ジャパンプレミアム「マスカット・ベリーA2012」。グラスに注いだ時の明るめの紅が印象的だ。
マスカット・ベーリーAは、
日本固有の、日本を代表する赤ワイン用品種。
1927年(昭和3年)に”日本ワインの父”と呼ばれる川上善兵衛氏が、
ベーリー種とマスカット・ハンブルグ種とを交配して、
生み出したものだそう。
赤ワインを註文んでおきながら、
目の前の炭焼き台に載せられたのは、
縞模様も鮮やかな「サバ串」。程良く焼き上げられた鯖の串は、
キリっとした醤油タレが塗られて出来上がり。
脂がよーく乗った皮目あたりがめちゃ旨い。
そして、そんな醤油タレの鯖串に、
マスカット・ベリーAの軽やかなにして、
ふくよかな果実味が良く似合う。魚料理に合うのは一般に白ワインだと云われているけれど、
日本ワインはちょと違うと実感させる瞬間だ。
目の前の炭焼き台から続いて届いたのは、
串焼きの「こころ」。一瞬の弾力ある歯応えの後、
包みこんでいた旨みが一斉に弾け出る。
そして、こんな串にもマスAの、
華やかな香りがすっと馴染む。
正直なところ、
カベルネ・ソーヴィニヨンのチリワインあたりに代表される、
重さと濃密さ直球の赤ワインには縁遠くなっているけど、
こふいふ赤だったらもっと目線を向けてもいいかもと、そう思う。
「コショウ鶏」は、その名の通り、
胡椒味仕立ての鶏のソテー。齧ったピンクペッパーの香りに、
やわらかな口当たりの赤を追い駆けましょう。
さらに炭に炙られ、焼き上がったのが、
「レバー」に「つなぎ」。ふんわりと加減良い焼き具合のレバー。
醤油タレに包まれたレバーの甘さが解れ出して思わず唸る。
焼鳥には兎に角日本酒でなんて、
ステレオタイプしちゃっていたけれど、
渋味や重さの代わりに心地よい果実味のある、
日本固有種の赤ワイン、合うんじゃないでしょか。
もしかしたら鮪赤身のづけとか、
銀鱈の西京焼なんて酒肴の美味しさも、
より膨らませてくれるかもしれません。
新橋駅烏森口徒歩1分、
ニュー新橋ビル裏手の烏森通りに炭の屋「でですけ」がある。「でですけ」というとJRの車窓からも眺める、
饂飩も喰える恵比寿のお店だけかと思っていたら、
新橋・銀座にも展開していたのですね。
そんな「炭の屋 でですけ」には、
サントリーの企画で訪問しました。
希少品を含むサントリーの日本ワインの幾つかは、
amazonから試すこともできるようですよ。
「炭の屋 でですけ」
港区新橋3-16-4 西原ビル1F [Map] 03-3431-3442
http://www.dedesuke.com/