ところが、駅が近づいたところで突如としてグヤ父さんが離脱宣言!
どうもスーツっぽい格好なんかしちゃって、黒いバックなんか提げちゃっていつもと違う空気を多少醸してはいたけれど、この時間になって出張に旅立つ魂胆だったとは知らんかった。
ああ、びっくらこいた(笑)。
でも、とっとと出張先に出向きたいところを、
無理して集まりに参画してくれてたんだねーと思いつつ、
残された御一行の面々の足は自然と、
立会川の暗渠にある緑地公園の向こう側へと向かっていました。
入り込もうとしているL字の路地。そこには「毘沙門天」「もも」「ゆがふ」、
「ラッキー」「ひょうたん」に「おぎ」「ひらほ」、
そして「みちこ」に「くめこ」といった、
小料理屋、居酒屋、スナックが犇いています。
でも目的地は決まってる。
L字の路地のちょうど曲がり角近くにある酒の店「大島」。
お店の看板に灯りが点っていますように!と祈りながら、
路地の入口を覗き込みます。
思わず祈ってしまうのは、
この正月にお邪魔して以降、
時折寄り道しようと路地に赴くも、
灯りも消えていて看板も出ていない状況に、
女将さん体調崩したりしていないだろうかと、
何度も不安を覚えていたから。
ああ、今夜は看板に灯りが点ってる!なんだか安堵の心持ちで縄暖簾を払います。
ここからは、正月の風景にも時間を遡る。
こんばんはーと窺うように縄暖簾の中に顔を入れると、
あら、いらっしゃいってな朗らかな笑顔で、
女将さんが迎えてくれた。
L字のカウンターの奥に先客さんがひとり。
ご常連とお見受けするそのシャチョーは、
既にかなり出来上がっていて、
足許も覚束ない様子であられました。
女将さんに麦酒を所望すると、
当然のように出てくるキリンラガーの大瓶。グヤ父さんは、鼻血を出しながら吞んでいる。
ダイジョブなんだろか…(笑)。
お通しの竹の子の煮物にもなんだか安堵する。訊けば女将さん、もう半世紀もお店を営んでいるそう。
踏切の向こう側界隈で3年くらいやって、
その後ここに移ってきたと云う。
壁のホワイトボードを振り返ると、
手書きのメニューが書いてある。おお、「あしたば」にトビとムロ二種類の「くさや」がある。
ここでやっと「大島」というのが伊豆大島のことであるのが、
判明したのでありました。
女将さんは昭和3年生まれ、伊豆大島のご出身でいらっしゃるのです。
鰹節をかけてくれた明日葉のおしたしをアテに、
コップの麦酒をいただく。澄んだ苦味が心地よくって、
思わず女将さんに、いいですねーと笑顔を向けます。
この辺りでGingerちんが登場。ゆきむらくんが、あ、どもってな感じで迎えます。
これもどうぞ~と女将さんが勧めてくれたのが、
明日葉を湯掻いた時に出た茹で汁。これがね、すっきりとしていながら意外な程の旨みを含んでいて、
それでいて苦味や青臭さがない代わりに爽やかな滋味がある。
なんじゃこりゃ~!とグヤ父さんも口走ります(笑)。
そうそう、この路地での個室おトイレは、
それぞれのお店が管理している鍵で開け入るスタイルになっています。「大島」とマジックで書かれた、
将棋の駒状の札のついた鍵を手に出て、
帰ってきたキミマツ姐さんはこう宣ふのでありました。
意外とキレイよ、でもちょっと怖いかも(笑)。
ここのトイレはタイミングが良ければ、
立ちションしているオッチャンの姿を、
間近で眺めることが叶うのです(笑)。
女将さんからは、お正月であったがゆえに、
こんなお祝いの品もいただいたりなんかして。そして会話を交わせば交わすほど、
その器量と愛嬌と気遣いがきっと、
幾多の常連客を魅了して賑わせてきたに違いないと、
そんな女将さんの魅力に、
一同メロメロとなるのでありました。
この夏お邪魔した時には、
女将さんのお誘いで、合流したナポちんともども、
並びにある酒処「くめこ」に突撃したんだよね。
「くめこ」常連のグヤ父さん、いなかったけど(笑)。
大井町、立会川暗渠の緑地公園沿い、
小さな飲食店がL字に寄り添う路地に酒の店「大島」がある。女将さんはきっとお店を開けるのが楽しくて、
それを愉しんできたからこそ今もカウンターの中にいる。
もう十分過ぎる程働いた女将さんではあるけれど、
これからも体調や気分に照らしつつ、
時折縄暖簾を提げて欲しいなと思います。
「大島」
品川区大井1-21-4 [Map]