そこで、温泉玉子トッピングの「インド風チキンカレー」をいただいた帰り道。
そろそろかなぁなんて考えながら近づいた「魚竹」の暖簾の脇に「生いくら丼始めました」の貼紙を見つけました。
その週明けのおひるに早速、築地警察の通りにいた。
いつも以上に足が急くのは何故でしょう(笑)。
「生いくら丼」の貼紙を改めて確かめてから、
その日の品書きが載るスタンドを横目にして、
暖簾を払います。前の週の暖簾は、涼やかな白の絣の暖簾であったものが、
藍染の暖簾に代わっていました。
ちょうど空いていた一席に滑り込んで、
銀鮭焼きと生いくら丼のセットをお願いします。
去年は鯖塩とのコンビだったけど、
今年はとうとう鮭の親子膳と洒落込むのです。
いくらを収めた硝子容器の蓋を回し開け、
丁寧に仕込んだであろういくらを匙で掬い、
大振りの茶碗によそったご飯の上に大胆に鏤める。
いくらの上に細かい短冊に刻まれた海苔を添えて、
小鉢をお盆に揃える。
大将のそんな所作を眺めるのも愉しいひととき。煌く宝石の如きいくらのどんぶりが、
眼前にやってきました。
やおら、ご飯ごと箸に載せ、
大き目の口を空けて、口腔に含み、歯を動かす。期待通りにぷちと弾けて、
期待通りに澄んだ旨味と風味が炸裂する。
ああ、至福の瞬間でありますね(笑)。
どっこい端正に焼き上がった銀鮭も、
いくらに負けない魅力でじわっと迫る。塩辛いだけの新巻を喰わされて、
鮭が嫌いになるひとがいるとかいないとか、
そんなことを聞くこともあるけれど、
これを口にすれば、
そんな呪縛から開放されること請け合いだ。
週末を跨いでふたたび築地警察の通りにいる。カウンターの隅に座れば、
耳元の品書きが、夜にもおいでよと囁きます(笑)。
この日もまた秋らしい膳「秋なすとかつおあら煮」。煮染めるたかつおのアラの身を、
骨からこそげるようにして齧り喰らう。
アラの煮汁を吸った秋茄子はとろんとして、
はちきれんばかりにふっくらと汁を湛えてる。
そっと噛めば溢れるエキス。鰤大根の大根に負けない、
秋の主役がここにもありました。
季節を追うようにして美味しい魚をまっしぐらにいただける、
ご存知「魚竹」ここにあり。場内で妙な行列に加わるくらいなら、
ここを目指すのが数段潔い、なんて思ってしまう。
寒くなるにつれ、
魚介の魅力がもう一歩またもう一歩と増してくると、
「魚竹」の魅力も深まってくるって、
どうやらそんな寸法になっているようです。
「魚竹」
中央区築地1-9-1 [Map] 03-3541-0168