とある初夏の夕暮れ時に北千住の西口にいたならば、そのまま帰るという選択肢は端から芽生えずにして、足は自然と横丁や路地へと向かってしまうのであります(笑)。
横丁や路地で見つけた、
両手に余る気になるお店たちを記憶に留めつつ、
ぐるぐるっと廻って結局、
西口のロータリーに辿り着かんとする、通称「飲み横」。
飲み横のおヘソの一軒が関西風串カツの立ち呑み処「天七」。そしてその並びで負けじと引力を発揮しているのが、
ご存知「千住の永見」であります。
店先のスタンド看板が揮っていて、
思わず立ち止まってそのコピーを読み上げてしまう。気の合う仲間と美味しい手(掌アイコン)作りの料理。
うまいビール(ジョッキアイコン)で乾杯すれば、
人生けっこう楽しいもんだ。
ひとり吞みしようとしているところにほんの少し複雑な気分も過ぎるも、
暖簾の中のカウンターには、ひとり吞みの御仁がずらりと並んでいて、
微かな寂しさも途端に吹き飛んでしまいます(笑)。
カウンターの端から端まで、ずらっと貼られた品札たち。さて、ひとまず赤星の瓶でもお願いしましょうか。
それとも、ちょっとした名物のひとつ「ボール」で喉を潤しましょか。「千住の永見」の「ボール」、
つまりは焼酎ハイボールはこんな色合いのグラスなのであります。
まさしく当店名物と謳うのが「千寿あげ」。千寿葱を思わす”千寿”の文字を見上げ乍ら、
お皿の脇に添えてくれた練り山葵をちょっぴり載せて口に含む。
成る程、ふわっとした食感の中から葱の甘い風味がやってくる。
コロンとした薩摩揚げの中にはとろんとした刻み葱。
美味いじゃないッスか。
お豆腐入りの方の煮込み「牛煮込み豆腐」を所望する。北千住の有名店、“千住で2番”の「大はし」 でも、
大鍋から届くザ煮込みと豆腐の入ったヤツとがあったっけ。
「大はし」の割とほろほろして味の滲みた身肉の煮込み。
対してこちらのは、こってりさせずにホルモンの甘さを引き出して、
ってな仕立ての煮込みで御座います。
「自家製ポテトサラダ」の丁寧に裏漉しした様子の、
しっとりテクスチャを舐めいただきつつ、
下町も居酒屋ならではの所謂「バイス」。どこかケミカルにも映る赤紫蘇の風味が、
とってもらしい、のでありますね。
これもまたこちらの定番「カレーコロッケ」。サラダと違って粗めにマッシュしたジャガイモに、
しっかりとカレー粉を塗して揚げた手作り感がいい。
「あさりと水菜煮びたし」をいただく頃にはコップ酒。硝子ケースの中を改めて覗き込んで、〆鯖をいただくも、
せめて註文を受けてから包丁して欲しいと小さく呟く恨み節。
それは、きちんと酔っ払った証左でせうね(笑)。
北千住の西口に幾多の呑み屋の星あれど、
地名を背負った呑処と云えば「千住の永見」でありましょか。また今度、ふらふらっと立ち寄れるのはいつの日か。
それは出来ればまだ日の残る黄昏前であって欲しい。
両隣に煙草を吸うオッちゃんがいないこともちょっぴり願って。
「千住の永見」
足立区千住2-62 [Map] 03-3888-7372
http://www.senju-nagami.com/