暗闇囲む横断歩道の向こうに点る灯り。 白い暖簾がおいでおいでと誘(いざな)うように風に揺らぐ。既にほぼ満腹であるのに、 引き寄せられるようにその灯りの下へと辿り着いていました。
件の暖簾を払えば、その拝殿は大賑わい。 たまたま隅の胡床二脚に空きがあり、そのまま腰を降ろします。変形に厨房を囲む、朱塗りのカウンター。 対面の壁の御札が示すは、「ぎょうざ」「おにぎり」「から揚げ」、そして「カニコロ」だ。
厨房の中央では、割烹着姿の姐さんを含む四人がかりで、 餃子を包んでくれている。せっせと黙々と、でも気負いなく、何処となく楽し気でさえあるけれど、 ずっと立っているだけでもしんどいのではと思ってしまう。 まぁ、座って調理する方の料理に美味しいイメージはないけどね(笑)。
手前に視線を下ろすと、 カウンターの内側に5つの業務用の瓦斯炉が並んでる。その上に据えられているのは全て、同じ口径のフライパンだ。
と、そこへアルミの盆に載せられていた餃子が、 向かって右手のフライパンの上へと綺麗に並べられる。
焼き手さんは、今度は向かって一番左のフライパンを手にして蓋を開け、 焼き上がった餃子をヘラで掬って、その脇に積んでゆく。そして、ひとつづつフライパンを左にズラすと、一番右のコンロが空くという寸法だ。 成る程だよね!
と、焼き立ての「ぎょうざ」がやってきた。 まさに今の今までフライパンの上にいたことが、 焼き目の縁取りに現れています。お皿にまず一礼。 これが不味かろう筈がないよなぁとは思いつつ、 タレもつけずに、ふーふーとだけしていただきます。
うほほほほひー(笑)。野菜の甘さが、想像を越える軽さで飛び込んでくる。 それが極々薄い皮の芳ばしさと一緒になって、あっと云う間に旨味に昇華する。 大蒜の利き具合も意外と繊細でいて、ぐっと勘所を掴んでくる。 ほひひ、こりゃ堪らん。
ほぼ満腹であったのに、一気呵成に喰らってしまって、まだ食べられそう。 追加しちゃう?と訊き合うなんて、可笑しいよね。
伊勢を貫く県道沿いの暗がりに、絶品餃子の店「美鈴」がある。こうなると「から揚げ」や「カニコロ」も、「おでん」までもが気に掛かる。 のむちゃん、水先案内をありがとう。 また此処にお詣りする機会のあらんことを願います。
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「美鈴」 伊勢市宮町1-2-17 [Map] 0596-28-8602
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