
なんだかんだ云ってもやっぱり京橋のオヘソだと、
そう勝手に思っている明治屋ビル。
その並びはひと区画まるごとの再開発が進み、
ぐるっと仮囲いに囲まれてしまっている。
きっと大手ゼネコンが立派なビルを建ててくれるのだろうけど、その代わりに此処にあったお店たちはもう、
その姿を失っている。
真新しい大きな建物に入ったお店の、そのファサードの表情はきっと味わいに浅く、風情がない。
東京を降雪が襲った成人式の日の翌日。
そんなことを想いながら、京橋方面へと足を向けました。
目指すは、一月一杯での閉店を決めたと知った、ご存知「京すし」。
右手を白い仮囲いが無機質に迫ります。
既にほぼ満席ながら、カウンターの端に席を得て、腰を据える。

閉店情報を受けて足を運んだひとが少なからずいるような、
そんな気配が静かなざわめきの中に含んでいるよな気がします。

歩きながら、あっ!と気が付いたのは、前日の雪の漁や流通への影響。
青魚の入荷はないかもしれないなぁと危惧しつつ訊けば、案の定。

鯵と鯖の「は~ふ&ハーフ丼」でとの目論見は、叶いません。
ならばとお願いしたのが、
いつぞやのいなだと鉄火の「は~ふ&ハーフ丼」。

以前いただいた丼で、その艶かしさがとっても印象的だったいなだは、
またそれとは違う表情を魅せている。
そしてまた、旨みを熟し、酸味や香りをふくよかにした景色の鉄火。

酢飯を按分して口に含めば、見かけの期待を裏切らない粋な味わいです。
これがもういただけなくなるなんてと思わずにいられません。
閉店を知ったひと達がランチ時に静かに参集するようになっていた、
「京すし」へと出足早めにふたたび。
鯵と鯖のハーフ丼はもう一度の機会にとっておいて、
久し振りに「にぎり」をと上からふたつめのものをお願いしました。


やや厚めにおろしたタネの味わいをそのまま活かすかのように、主張を控えたシャリ。
ずっとこの握り方で一本筋を通してきたのだろうなぁと、
勝手ながらそんなことを考えたりして。
鯵と鯖目掛けて、もう一度訪れようと思っていたけれど、
風邪をひいて寝込んでいたところに身内の不幸が重なって、
足を運ぶ機会を逸してしまいました。
でも、年明けから二度お邪魔して、
凛としてかつ気の置けないあの空気に改めて触れられてよかったな。
明治十年代中頃の創業といわれる京橋「京すし」がその舞台の幕を閉じた。


「京すし」の庇に残る雪が溶ける様子はもうきっと見られない。
歴史を受け継いできた四代目ご主人の心情や五代目の想いや如何にと慮りつつ、
再開発というものの無情さや無粋を思うのでありました。
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「京すし」
中央区京橋2-2-2 [Map] 03-3281-5575
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