横桟の引き戸を引けばすぐに、L字を描く白木のカウンター。 そこは、都合7名さま限定のこじんまり。 すっきりとしたカウンターに、スマートな硝子ケースが載っています。 おつまみ~にぎりのおまかせでお願いしました。
麦酒の中瓶をいただいての小鉢は、万願寺唐辛子を炒めたもの。 続いて、星鰈と真鯖のお造りに翠の玉子を頂いた牡丹海老。 澄んだ、透明感のある味わいでスタートです。
冷やでいただくお酒は、静岡の「喜久酔」。 穏やかで呑み易いお猪口となります。
戻り鰹のたたきは、気仙沼からのもの。 薬味に添えた茗荷がいい香気です。
醤油漬けしたいくらは、極薄いその皮が柔らかく弾けて、 海の旨みをとろーんと味わえる。
太刀魚の焼きものには、酢橘に茗荷。 載せた器も熱く、ほろっとしたその身に品のいい脂が帯びて、美味しいな。
ファサードの白壁の脇で揺れていた風鈴。7席というこじんまり感は、カウンターの客相互とご主人との一体感を生んで、 自然と会話を交わすようになって、静かな和気藹々。 聞けば、何度も予約の電話を入れるのだけど、いつも満席で、 やっと来れたと仰る先客さんもある。 それで、前日に電話を入れて予約が出来たのは、 物凄ーいラッキーだったのだと知ったりして(笑)。
にぎりの最初は、真鯛の昆布〆。 明らかに小さくにぎるスタイルで、かつスラッとしたそのフォルム。 昆布〆した鯛の独特の香り。
サクッとした歯触りが印象的な墨烏賊の子供。 赤貝には、酢飯が酸っぱめになった。
新子のちょい大きいクラスの小肌。 ハラリと解ける舎利の塩梅がいい。
利尻の馬糞雲丹の軍艦に、 海老は才巻よりちょっと大きいくらいのもの。 秋刀魚、美味し、脂の加減よく。
ここで、大とろ。 穴子はツメで。 小さいにぎりでも、十分に満たされてくるものです(笑)。
にぎりの印象は、透明感があり、軽やかで、繊細で、いい。 ただ、その分、味わいの芯が頼りなく思う瞬間もある感じだ。
荒木町柳新道通りに、居心地よき新進の鮨「てる」がある。訊けば、若きご主人は「てる」さんではなくて、智弘さん。 「てる」の名は、ご主人のお祖母さんからいただいたものだそう。 お祖母ちゃん子だったというご主人のお祖母さんは、群馬にお住まいの御歳90ン才。 自分の名前が付いたお店ならもう、何度も店を訪れていても不思議じゃないと思うところ。 ところが件のオバアちゃん、此処へは一度来たっきりだという。 なにせ肉好きなもので、なんですって(笑)。
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「てる」 新宿区荒木町7 [Map] 03-5379-8138
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