南新宿の駅から代ゼミの通りへ出る下町っくな商店街。
いつぞや、ここの前を通ったのは確か、小田急線ガードの向こうにあるお店への道すがら。
それは、カレーハウス「ライオン・シェア」への途上だったか、それともローマピッツァの店「IL PENTITO」か、はたまたレストラン「キノシタ」への途中だったか。
大学定食「しょうが亭」のちょと手前にある「馬鹿牛」という店の名が強く印象に残っていました。
週末に予約を入れて突撃した、夕暮れ間近の商店街。
まだ十分明るさの残る通りにちょうど提灯の灯りが点った頃。
焼酎のラベルがぺたぺたと貼られた入口廻りから、まだ先客のないカウンターを覗き込む。
どうやら一番ノリのようです。
カウンターの真ん中に乗り込んで、まずはビール。
ジョッキを傾けながら見上げた黒板には、「熊本産の馬」とか「長野産の鹿」の文字。
鶏でも牛でも豚でもなくで、馬のレバーというのは口にしたことがない。
お初モノはまずは注文んでみなければ、ということでお願いした「熊本産 馬レバー刺」。
レバー刺しの王道ないただき方、塩胡麻油に包んで分葱を載せたお馬さんのレバーは、深い褐色。
どれどれと口に含むと仄かな鉄分ぽい風味としっとりした旨み。
黒っぽくても鮮度が怪しいなんてことではなくて、臭みも勿論ない。
レバー刺しと同時にお願いしてあったのが「長野産野生 鹿刺」。
さらっとした滋味にパセリの香気とさっと搾った檸檬の酸味がよく似合います。
煮込みと知れば思わず手を挙げてしまう性分(笑)を発揮して、
「ホルモン煮込み」。
「馬肉餃子」は、そうと知らなければ合挽き肉の餃子なんだろねと思うよな何気なさがいい。
この感じではやっぱり、ホッピーだよねとボトルを受け取ると、手の中に見慣れないラベルのホッピー。
ホッピーらしく質素に白一色で直接印刷してあるいつものボトルは「お店ホッピー」で、330mlのこのボトルは「お宅ホッピー」というカテゴリーらしい。ボトルの中身は同じなんだけどね。
「自家漬け生姜酎入り」にしてもらいます。
ホッピーをくぴっとしたとなれば、やっぱり串焼きをいただかなければいけません。
豚の串シリーズから、力強さを思う「レバー」に粗挽きの胡椒が乙な「タン」のシコシコ。
細やかな食感が意外な「つくね」に旨みがグンと迫る横隔膜「ハラミ」。
「つくね」の表面が不思議な艶を帯びているのは網脂を巻いているからだ。
「ガツシン」とは、ガツ(=胃)のシン(=芯)、なんだろね。
胃袋の入り口辺りの部位らしく、焼かれて丸まったコリコリがコラーゲンちっくなとろんとした旨みを包んでいます。
見覚えのあるラベルが目に留って、懐かしさに思わず手に取った。
日本地図の上に「RUM」とあり、リボンには「BONIN ISLAND」の文字。
ずっとずっと南方の海の上に描かれた赤い点。
そう、25時間かけて渡った小笠原で初めて出逢った日本のラム酒なんだもンな。
早速そのグラスをいただいて、鶏の串からご存知、「せせり」と「ぼんじり」。
どこかふわっとした「せせり」に対して、「ぼんじり」は、鶏の脂の甘さを香ばしくいただく感じになる。
そして、日本のラムにもよく似合うのが、うなぎ串「きも串」。
ほろほろとした苦味が滋味と裏腹に届くオトナな味だ。
しょんべん横丁の「カブト」を彷彿とする。
浜松産鰻の小さい串の「かば串」や本山葵でいただく茹で肝「きもわさ串」も気になるところ。
呑兵衛心を満たす炭火焼きの串と焼酎の店、南新宿「馬鹿牛(ばかぎゅう)」。
産地から直接仕入れる馬や鹿が真骨頂ではあるけれど、豚や鶏や鰻の串も気持ちの入った逸品たちだ。
あっという間に埋まったカウンターの様子をみると、予約して臨むのが懸命なようです。
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「馬鹿牛」
渋谷区代々木1-41-3
[Map] 03-3370-6554
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