吉本の芸人コンビ「シャンプーハット」って知ってる?
そう訊かれて、残念ながら知らなかったのだけど、その片割れ「てつじ」が心斎橋につけ麺の店を出して評判なんだという。
然らば、大阪に赴いた折には寄ってみようと頭の隅に置いていました。
遅く着いた新大阪からそのまま地下鉄で心斎橋へ。
御堂筋沿いの大丸本館と北館との間を抜けていって、玉屋町筋を左に折れた繁華街の一角にあるのが「宮田麺児」だ。
23時の閉店も近い時間だというのに、7、8人ほどが店前で席が空くのを待っています。
店先の販売機で示すは、大きく三つのメニューカテゴリー。
てつじオリジナル麺「T2G」に、内麦平打ち麺「JF100」、そして麦芽香太麺「NB50」。
メニューからも、”麺が命なんや”と謳うだけある、麺に、そしてその元となる小麦に対するこだわりが十二分に伝わってきます。
二杯いっぺんに喰うとかいう融通が利かないお腹ゆえ、どれにしようかなと悩んで、粉の風味が一番感じられそうな「NB50」のボタンをぽちとしました。
仲のイイふたりで来れば「別盛り」の麺を追加することで三種類の麺が全部試せるよ、と知らせるポスターを横目に暖簾の奥へ。
通路の壁に掲げたイラストが主てつじ、その人か。
促されるまま、入ってすぐの小さなカウンターに座り込む。
開店を祝う花の贈り主は、西川きよし&ヘレンだったり、ハイ・ヒールのリンゴだったり。
届いたどんぶりには、その内縁に沿うようにステンレスのリングが廻ってる。
つまりは笊なのだけど、こんな笊、特注したのでしょうか、既製のものなのでしょうか。
麺に振り掛けられた、擂り胡麻?と思う粉末は、ローストした麦芽。
切り歯の番手16番という太く量感ある麺が誘います。
「つけ麺のお召し上がり方」に示してある通り、まず麺に鼻先を近づけてくんくんしてから、徐に麺の2、3本を摘まみ上げ、啜ってみます。
うわー、なるほど小麦が香るねー、ってはっきり判るほどのことではなくて、湯掻いて水で〆たあとの水っぽさが先に立って、その後からじわじわと風味を愉しむ感じ。
生麺の匂いを嗅いでみたいかも。
つけ汁の赤い椀の中身はというと、それは随分とどろっとしたヤツ。
ちょぼちょぼと麺を浸して、啜るというよりは手繰るように麺を口に収めます。
野菜類あれこれのペーストに動物系のエキス、脂を渾然とさせたような風情の汁。
ニンニク風味のようで、そうではないようでもあって、なんだか不思議な味わいだ。
どろっとして過剰に強そうにもみえる汁より、むにむに食感の麺の主張の方がなるほど強い。
んー、新機軸ではあるよなーと思いつつ、むにむにする目線の先に魚粉の入った器が目に留りました。
終盤になったところで、その魚粉をつけ汁に振り入れてみる。
あはははは。
急に、味わい風味旨みに一本芯が通って、一瞬にして視界が開けた感じ。
魚粉がどれだけ魔法の粉で、ある種ズルい粉であるのかを如実にされた瞬間だ。
「てつじ」氏本人もこれをカウンターに置くのを潔しとしていないというような趣旨のことを聞いたので、もしかしたらそのうちカウンターから消えるかもしれません。
でもね、魚粉の風味、嫌いじゃないンだよねー(笑)。
化調を否定しきれないことと似た感じでもあるよね。
吉本芸人「シャンプーハット/てつじ」の店「宮田麺児」は、
“有名人のナンチャッテな店”では、ない。
真摯で執拗なまでの麺へのこだわりは、玄人はだしの意気込みに映る。
また機会を得て、未食の「T2G」「JF100」も啜ってみたいな。
「宮田麺児」
大阪市中央区東心斎橋1-13-5
[Map] 06-6243-1024
http://www.miyatamenji.com/
column/02989