店名をマジック書きした薄っぺらい暖簾の脇からおずおずと店の中を覗くと、 店主らしきオヤジさんが、やってますよ的な表情を向けてくれる。ちょっと、お邪魔してみましょう。 古びたメラミンのカウンターに、これまた手作り感一杯に装飾した棚や壁。 その壁に貼られた品書きには、 三種類のつけ麺「ぴり辛魚介つけ麺」「深香魚介つけ麺」「潤香魚介つけ麺」。 三種の魚介をブレンドしたコクのある深い味、とある「深香魚介つけ麺」をいただきます。 手狭なカウンターの中を右へ左へして、調理に勤しむオヤジさん。 ただ、麺を湯掻く鍋には、そんなちょっとのお湯じゃなくて、たっぷりしたお湯を用意したらどうかと思うのだけど、それにはもっと火力のあるレンジが必要なのかな。 そして、麺用のテボとは違う、普通のステンレス笊で湯掻いた麺を無理くり上げて、小さな流しで流水に晒します。 水に〆た太麺は、つけ麺のスタンダード版の感じ。特異に思わせるのは、そのつけ汁です。 魚介つけ麺の汁にありがちな、魚粉ふんぷんなタイプとは見掛けから違ってる。 白濁しているのは、なにから抽出したのか、コラーゲンも一躍買っているらしい。 へー、どれどれと太麺を引っ掴んで、その汁にたっぷり浸して啜ります。あれ?でも、謳っている”コクのある深い味”には正直云ってなってない。 濃い味強い味に毒されてしまっているのかなぁと自省混じりに、もうひと啜り。 んー、どこか焦点の定まらない不思議な味わいは、高度に複雑なことなのか、どうなのか。 路線はまったく違うけど、ふと、心斎橋「宮田麺児」で食べたつけ麺の汁を思い出す。 繰り返しいただくと次第にハマってくるのかも。 兎に角、独特ではあるつけ麺だ。
帰り掛けにみた、壁の葦簀に「らーめん」もあったなぁと急に気になって(笑)、 ふただび荏原町商店街の端っこへ。 改めて、葦簀に貼られた「らーめん」の品札を読むと、”個性的 しお系”と謳ってある。 ああ、らーめんも独特系なんだ(笑)。 なるほど、受け取ったどんぶりは、謳いの通り個性的。軽く炒めた具材をのっけてくれているのだけれど、 豚バラと一緒に炒めているのは、白菜や浅蜊。 そこに、豆腐の四角がごろっと入るという。 そして、ヌルめなスープはやっぱり、お味の焦点ややぼんやり。 優しい味わいなんだと自分に言い聞かせつつ、食べ進みます。 思えば、コラーゲンって無味なものだもんな。 仕上げに、つけ麺用の「しめご飯」50円をらーめんにも適用してもらいます。スープを残したどんぶりを戻して、温めなおしたスープで魚粉を添えた雑炊にしてくれる。 定番のサービスだけど、そのひと手間が嬉しいもんだよね。
荏原町商店街の魚介つけ麺「一の加房(いちのかぼう)」。「一の加房」は、10年1月15日の開店。 老夫婦が中華そばを営んでいたけど体を壊して閉め、三年ほど使われないでいた箱だったらしい。 葡萄なんかの房のなるものをイメージに、一から少しづつでも増え加えていって房になれ、という意味合いで名付けた、のだそうです。 関連記事: 小麦香る極み麺と野菜の旨み「宮田麺児」でNB50つけ汁と魚粉(10年06月)
「一の加房」 品川区中延6-1-19[Map] 033783-0307
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