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海鮮居酒屋「やなせ」で 白子の揚げ出しに旨み湛えるじゃっぱ汁
県庁近くの居酒屋「樽」を後にして、
雪のバンバン降る中やって来たのは青森屋台村。
赤や黄色の提灯が揺れる「さんふり横丁」には、15軒ほどの飲食店が軒を連ねているそう。
横丁の路地らしい、狭い間口の通路にも風雪が舞い降りています。
その中の一軒、海鮮居酒屋「やなせ」さんに狙いを定めて格子戸をガラガラと。
入った途端に眼鏡が曇る。
10席にも満たない小さな屋台なカウンターは温かで、オヤジさんの木訥とした笑顔が迎えてくれます。
軒先で揺れる黄色い提灯は「ハイボールはじめました」の提灯だもんねと、早速「ハイボール」をお願いすると、いつもの亀甲ジョッキではなくて、アサヒビールのジョッキで出てくるところがなんともご愛嬌。
亀甲ジョッキは大事にお家に持って帰っちゃったンだって(笑)。
手元の品書きはもとより、至るところに貼られた品札を見上げてきょろきょろ。
やっぱり「なまこ」は清水川なんだねなどと思いながら、その隣に貼られた「鯨刺身」をいただいてみる。厚切りの身はルイベ状ではなく、かつ獣っぽさのない乙なお味。
おろしニンニクでもおろし生姜でも、どちらでも合う。
オヤジさん、どこで揚った鯨だって云ってたかなぁ。
なかなかの人気モノだというのがよく判るのが、
鰺ヶ沢・長谷川牧場の有精自然卵を使った「玉子焼き」。出汁巻き仕様の焼き立てを口の中で転がすようにホフハフいいながらいただけば、柔らかな旨みと玉子の優しさがじわじわと身体の芯に伝わって幸せになる。
これは、オヤジさんの後ろで活躍している女将さんの手によるものかな。
なんと「どっちの料理ショー」に出演しちゃった玉子焼きでもあるらしい。
ふ~、ホフハフ。
むつ市の「関乃井」なんぞをツツツとやっつけているところに届いたのが、
「白子の揚げ出し」。鱈白子のとろんとしたコク味と汁に浸ってフヤケ始めた天ぷら衣のイケナイしどけなさ。
これはもう、語るまでもなくズルイよなぁーの逸品であります。
そしてこれまた素朴なクセして満ち足りた幸せな心持ちにさせてくれたのが、
takapuが是非にという「鱈のじゃっぱ汁」。捨てる(じゃっぱ)ところを使うから「じゃっぱ汁」。
灰汁のない澄んだ汁には嫌味のない旨みが、あれあれ?って思うくらい豊かなのだ。
鱈のアラってのもやってくれるものだねぇ。肝も活躍しているのかな。
身も心も温まって、ぬくぬくだ。
「さんふり横丁」の”さんふり”とは何かというと、津軽人の気質を表現する三つの”ふり”からきている、とWebサイトにある。
いい格好しぃの「えふりさん」で、お金や物を持っていると見栄を張る「あるふりさん」で、知ったかぶりな「おべだふりさん」なのが津軽のヒトなんだという。
でも、リーフレットで「七子八珍」の説明をしてくれた、気の置けない空気と表情のオヤジさんを見てると、それが意外なことにも思えてくるね。
青森屋台村・さんふり横丁の真ん中あたり。
下北から、南部から、津軽からと郷土の魚介を活かした酒肴が目白押しの、
小さな海鮮居酒屋「やなせ」。海のものあれこれに目移りしっぱなしだけれど、
「生姜味噌おでん」「鳥のネクタイの塩焼き」「田子のにんにく揚げ」「豚バラ塩焼き」などなどと魚介以外のメニューも気に掛かる。
オヤジさんに会いに、また行かなくちゃだ。
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「やなせ」 青森市本町3-8-3 さんふり横丁内 [Map] 090-5188-5380