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八重山膳符「こっかーら」で八重山伝統料理さとうきび畑の隠れ家
行き先を告げて、
ホテル日航八重山を左手に進むタクシー。
例えば自転車で目的地までたどり着けるかどうかなんて話をしていると、
距離的には可能だけど迷うかもね、と運ちゃん。
そう云えば、いつぞやの早朝に訪れた「とうふの比嘉」もこっち方面だったね。
やがて車は、両側をさとうきび畑に挟まれた道に入り込み、その突き当たりから更に左奥へと進んだ。
タクシーを降りたところで眺める赤屋根の邸が、今宵のお食事処「こっかーら」だ。
鬱蒼とした樹木に囲まれたアプローチを行くと車の音に気づいたのか、主人が迎えにでてくれる。
ご自宅の縁側から上がるような格好で、座敷に案内されました。
ゆったりと落ち着いた部屋で、うこんの入った冷たいさんぴん茶。質実な装いながらも、民家としてはなかなか豪勢な邸宅かもなぁとあたりをきょろきょろ(笑)。
「こっかーら」でのお食事は、「八重山膳符」と呼ぶコースが昼の膳、夜の膳とあるのみ。
パンフレットによると、ご主人の生家である宮良殿内(みやらどんち)は、琉球王朝時代に八重山群島での役人の最高職のひとつ宮良間切りの頭職(あたましょく)となった宮良親雲上當演が首里の士族屋敷同様に伝統的な琉球の建築様式に則り建造した私邸で、国の重要文化財。
「八重山膳符」は、その宮良殿内家に伝わる献立書「膳符日記」を基本に先人の知恵を受け継いだ伝統料理だとあります。
まずやってきたのが、擂り流したゴーヤにパッションフルーツを浮かべた硝子の器。ゴーヤの苦味柔らかですっきりとした涼感が心地よく、そこへパッションフルーツの甘酸っぱい香気が色を注す。
うん、いいね。
続いて、「おつけものです」と白い角皿。
島らっきょうに並んでる鮮やかな橙色がかんぞうの花。
そしてシャクシャクと独特の歯応えの赤いヤツはローゼルという植物の萼だとご主人。そして、葉の上にのっているのが島味噌だ。
そして紅色麗しい豆腐よう。相棒が楊枝で半切にしてそのまま口に運ぼうとするので慌てて制止して、ちょっとづつ、と(笑)。
初めて那覇を訪れた時、そうとは知らずに切りもせずそのままひとつの豆腐ようを口にして、その味の濃さにびっくりしたことを微笑ましく思い出します。
これにはやっぱりと、オリオンから泡盛に切り替えて、八重山酒造の「黒真珠」。
四角い酒器、カラカラでやってきます。
お造りはといえば、青ブダイ。
シークァーサーをさっと搾り、小皿の酢味噌少々でいただきます。
厭味のない脂を意外にたっぷりと含んだ白身は、カラフルな魚なんか食えるかよと仰る御仁があれば食べさせたい感じ(笑)。
つけあわせのスーナは、ユミガタオゴノリという珊瑚海草で、コリコリとした食感が愉しいヤツ。
琉球イタリアン「Vino et Vin」のサラダでいただいたツノマタにとっても似ているな。
この日の天ぷらは、モズクにアーサにゴーヤ。抹茶塩でいただきます。
ピパーズ(島胡椒)やウイキョウ、フーチバ(よもぎ)なんて日もあるみたいだ。
白味噌仕立てに牛蒡を添えたラフティは、なんとも柔らか。舌の上でとろっと蕩けて、甘く消えるのでありますな。
そして、「山本綾香」でも一番印象深かった、どぅるわかしー。やっぱり、ターンム(田芋)の素朴な魅力が一番しみじみ味わえていいのだなぁ。
お椀には、島の野草の代表格も浮かんでる。しっかりした出汁がひかれていて、そこに寄り添うのが、オオタニワタリ、アダンの新芽。
そしてシブイ(冬瓜)、がんもどき、など。
ふと、「森の賢者」でいただいた「島素材(野草と野菜)の天ぷら盛り合わせ」を思い出します。
冷たくした出汁でいただくのが、菜飯(さいふぁん)。じゅーしー(炊き込みご飯)に出汁を注いだという風情で、トッピングの青みはサフナ(長命草)か。
ずずずとしては、しみじみ、ずずず、しみじみ、そして一気にずずず(笑)。
熟れ熟れで蜜の入ったパインで大団円。
思わず両手を合わせる、そんな感じ。
デザートには、青豆のぜんざいを用意することも多いそうだ。
さとうきび畑の向こうの隠れ家、八重山膳符「こっかーら」。「こっかーら」とは、「コッカル~」と鳴く、かわせみ科の琉球アカショウビンの方言名だそうで、なるほどそれで道端の看板にカワセミの絵が挿してあったのですね。
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「こっかーら」 石垣市字大川839-1 [Map] 0980-88-8150