代官山の駅近く。
どこか宮殿風な造りのヘアサロンの地階にあるリストランテ「CANOVIANO」にお邪魔です。
厨房に沿うようにL字を描くレイアウトの店内はなかなかの盛況で、そのままずずいっと奥まで案内されて突き当たりのテーブルへ。
「CANOVIANO」では、イタリアンに真っ先にイメージするニンニク、唐辛子、そしてバター、生クリームなどの動物性油脂を使わず、素材の魅力を活かした皿たちを供しているという。
八重洲口の系列店のランチでは、どこか物足りないような印象も抱いてしまったけど、今夜は“自然派イタリアン”をスタイルとする植竹シェフの本懐に改めて触れられたらいいな。
ディナーコースの“CHEF’S“をお願いして、食前酒をいきなりの白ワインで。
酸味を抑えた華やぐような呑み口がいいなぁとのリクエストで出してくれたのが、「PLOZNER」。アロマティコという種類のぶどうを使っているという、まさにリクエストのイメージに合致した一本だ。
まずは前菜にパスタというパターンで、「北海しま海老とカラスミの冷製カッペリーニ」。
ああまた、今はなき「HIRO」代官山で初めてカッペリーニの冷製パスタを啜った時のときめきが蘇る。しま海老のねっとりとした甘さもよく合うね。
サラダは、「久米島沖産 初ガツオの炙りカルパッチョ 季節野菜のサラダ仕立て」。
千切り齧るパンは、どうやら下馬の「Tigre(ティグレ)」のものらしい。添えてくれたオリーブオイルが華やかコクのあるフレッシュさで、いい。
ここで、可愛いサラダ仕立てのお魚料理。
稚鮎のほの苦みが小粋なお皿は、「紀州産稚鮎のグリル 伏見甘長唐辛子のソテー添え」だ。伏見甘長唐辛子は、「ひもとう」とも呼ばれる京野菜で、辛くない唐辛子だとある。
パスタへと展開して、「生ウニとトマトクリームソースのタリアテッレ」。
粉の風味が味わえる印象の手打ち的平麺に甘さに似た雲丹の風味とともに乳化したソースがひたっと絡まって、旨い。
魚料理本編は、「沼津港直送 天然真鯛のポワレ 壱岐島産グリーンアスパラガスのポタージュとともに」。
ひと皿は、ノドグロにバージョンアップ。
抹茶色のソースにアスパラの風味がぶわんとして、皮目の香ばしい鯛の身と意外なマッチ。これも和食的なアプローチにも思えます。
ピエモンテの赤「CAPPELLANO NEBIOLO D’ALBA2001」をグラスでもらって、
メインの肉料理に「黒シャラン産鴨胸肉のロースト 仏産モリーユ茸のソース」。
鴨肉大好きっ子としては、わしわしする歯応えも、そこから滲み出る鴨のエキスも大歓迎(笑)。
モリーユ茸とは、アミガサタケと呼ばれる春のキノコらしく、鴨肉を浮かべた褐色のソースはそのキノコでひいたソースってわけだ。
デザートには、
「ほろ苦いキャラメルジェラートにバナナとブリュレしたザバイオーネソース」。
コース料理をフルにいただくと、実は結構苦しくなってたりするのだけれど、そんな心配はなく軽やかな食後感。
京料理のようなエッセンスも窺えるのは、実際にモチーフにしているからなのか、あくまでもイタリアンの“自然派”スタイルから派生したものなのか。
美味しいのにやっぱり、描かれる味わいの輪郭にもうちょっとエッジが欲しいとも思ってしまう。
さらにもっとオジサンになったら(笑)、今夜のお皿たちがもっときっとぴたっとくるような気がするな。
店名の「CANOVIANO」は、植竹シェフのイタリア料理修行で初めて入った店の名前で、今はなき当地の店の名のそもそもの由来は、3人の女神が互いに抱き合う彫刻作品にある、のだそうです。
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自然派イタリアン「CANOVIANO TOKYO」 で自然派の難しさ(07年05月)
RISTORANTE「HiRo Ⅱ」 ヒロ・ドゥーエ代官山店(03年12月)
「CANOVIANO」 渋谷区恵比寿西2-21-4代官山パークスビルB1 03-5456-5681
http://www.canoviano.net/
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