column/02046
おでん「なだ一」
渋谷の味ある横丁、のんべい横丁に再び繰り出してみました。予約の叶わなかった「鳥重」の満席具合を横目にしながらさらに進んで、突き当たりのトイレが近づいたところで右手にある「なだ一」さんの様子を窺う。おでんの鍋が硝子越しに見つかり、席もほぼ一杯に見える。引き戸をちょっと開けて、「いっぱいですか?」と訊くと、おふたりなら大丈夫ですよ、と云う。ちょうど奥からトイレに行きたいというオッチャンの声が挙がって、手前の全員が一旦店の外に出る、座席民族の大移動。この横丁では当たり前の風景だ。無事おでん鍋の前に陣取ることができて、早速おでん。大根に玉子にちくわぶにごぼてんにしいたけにはんぺんにとうふに、と定番どころをほぼ制覇。ねぎ、というのが面白くて、長葱の千切りを中にして緩くまとめた練り物で、噛めばたっぷり吸った汁がじゅわわんと溢れ出す。汁にぽっかりと浮いて沈むのことのないはんぺんは、ふわっふわなのに肌理の細かい食感だ。さば節を使っているという汁は、黒くなく、白醤油関西風のどちらかというと大人しい印象のもの。あ、そうそうまぐろの「ねぎま」もオススメです。芋のロックに切り替えて、脂の旨みがぎゅぎゅっとした「紅鮭ハラス」をいただく。斜向かいの「まぐろ処」が兄貴のお店とのことで、お魚系はそっちから融通してやってくるンだ。〆にと五目なおにぎり。おでんの汁がほしくなる(笑)。ちょっと身体壊しちゃったオカアチャンの後を守ってやっているという妹さんの話も屈託がなくて和ませる。やっぱりいいやね、この横丁。ガキンチョがいないのも肝要だ。
「なだ一」 渋谷区渋谷1-25-10 03-3409-8773