中町4丁目の交叉点付近でタクシーを降りてみたものの、辺りにそれらしき店名を示す灯りも見当たらない。
少し交叉点の方へと戻ったところで、暖簾もなく照明を点すこともない店先に「鮨 あら輝」の表札を見つけました。
おずおずと扉を引くと、白木のカウンターと座面の椅子の真紅とが清々しいコントラストを見せる、ゆったりとした店内が見渡せました。
L字に、板場に向けて3層を織り成す白木のカウンターの中央に、「あら輝」店主荒木さんのがっちりとした体躯と笑顔がある。
わずか12席の、左隅へ。
口開きは、自身の肝を巻き込んだ平目。
とろっとした縁側も添えられてきます。
続いて絶妙な柔ら かさに煮られた鮑。
別皿で肝が届いたところで、これは堪らんと「神亀」のお銚子を。
太平洋側から日本海へと迷い込み、博多沖で揚げられたという「迷い鰹」は、ねっとりとした味わいで、カツオとは思えない品格だ。
雲丹といくら、塩味で炙った墨烏賊のゲソに続いて、ぼらの玉子。
からすみと違って、西京味噌に漬け込んだものをスライス、炙ったもの。
ねっとりすっきりとして、ああ、お酒が進んでしまう。
そして握り。
いきなり大間の鮪が4連続だ。
お腹部分からカマ下に向ってグラデーションをなすようにだんだんと脂が強くなっていくんだ。
なんて綺麗なサシの入り具合なんだろう。
赤酢を使っているという少し茶色味を帯びたシャリがはらりと解けてネタと一体となって蕩けていく。
小ぶりなサイズがまた、いい。
旨くて頭を抱えてしまうなんて初めてだよ。
一転して、目の前には立派なサイズの白子が。
なんの白子だろう。
はい、手を出して。
周囲を軽く炙ったその白子を輪切りにし、切り口を上下にしてシャリの上にのせ煮詰めを塗り、そのまま手渡ししてくれる。
ああぁ。
これまたとろんとしてねっとりとして、でも一点の曇りもなくすっきりとしてそしてあっと云う間に消えてしまう。
切ないぐらいの旨さに今度は、天を仰いでしまう。
解答は、とらふぐの白子だ。
こはだ、鯖、墨烏賊、鮪のヅケと続いて、
立派なサイズの煮蛤、炙りたての穴子。
口に運ぶ度に、ううむ、おおぉ、はっはぁ~、などと一々図らずも唸り、嘆息を漏らしてしまうんだ。
12席それぞれの席から絶賛を込めた声が荒木さんに投げられ、それが次第に店全体の一体感になっていく、そんな鮨「あら輝」。
旨いものを共有した喜びから意気投合してしまうんだね。
いやぁ参った。
お隣さんが追加注文したネギトロも見るからに贅沢な逸品。
でもそれは今度のお楽しみにとっておこう。
毎週日曜に焼き上げるという「伊達巻玉子」も気がかりだ。
滅多に来れる訳ではないけれど、
思わず「また来ます!」と云ってしまったしね(笑)。
「鮨 あら輝」
世田谷区中町4-27-1上野毛リトルタウン102
[Map] 03-3705-2256
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