ただ何れも乗り換えるばかりで、駅周辺のことはほぼ判らない。
それは、上記以外の”浦和とつく駅”5駅のこととなれば、猶更だ。
この日お邪魔したのは、西浦和駅と武蔵浦和駅そして中浦和駅からおよそ等距離に位置する辺り。
貨物船を含めた武蔵野線が構成する三角地帯の近くになる。
土地勘ゼロのまま、
Googleセンセイの導きに従って愛車を駆ります。
ところは、さいたま市鹿手袋。
入り込んだ住宅地の通りから狭い道へと右折。
さらに狭い道へと左折すると、
こんもりした木々に包まれた一角が目に飛び込んでくる。
駐車場にクルマを停めてドアを閉めると、
漆喰の白に囲んだ蔵のようなフォルムが目に映る。
一直線に左肩上がりの階段が印象的だ。
この階段はどこへ向かっているのだろう。
大谷石の低い石塀の上には、
ヤマアジサイの薄紫の可憐な花。
そして、なにやら見たことのない実が転がっている。
どうやらこの実が店名の由来となる、
無患子(ムクロジ)の実だという。
正面に回り込むとそこには、
木漏れ日の差し込む心地良さそうな前庭があった。
このベンチで麦酒を呑るのもオツなもの。
そんな気分にもさせてくれます。
建物の中へと招かれて振り返る。
何気なく扉の枠あたりを見ると、
竹小舞の土壁の下地が覗けます。
築200年以上の蔵を改修したという、
レストラン「mukuroji」の店内の土壁に、
入口扉の硝子越しの無患子の葉のシルエット。
蔵の間の中央にデン!と据えた大テーブルの向こう、
厨房への暖簾の前にも、
グラスに収めた無患子の実が窺えます。
クルマゆえに残念、そう思いながら、
ノンアルコールカクテルのメニューから、
不思議なタイトルの「針葉樹」を選ぶ。
トニックにミントの香り爽やか。
仄かにそれとは別の香りもするような(^^)。
そして、前菜が「夏野菜と針葉樹」。
あれこれ夏野菜の上にヴェールのように載せられた、
透明なシート状のジェルがこのお皿の肝。
昆布茶に杉や松の緑の葉の部分だけを漬け込んで、
つまりは針葉樹エキスの滲みた昆布茶を作って、
それをゼラチン的なものでシート状にしたもの。
黒い粒は黒オリーブのパウダー。
ほんのりとあの葉の風味がして、面白い。
そうか、するってぇとカクテルの”針葉樹”も、
その昆布茶を含むレシピなんだね。
夏野菜の中の人参が甘くて美味しくて、
思わずそんじょそこらの人参ではないのでは?
と訊いてしまう。
ところが返答は否。
普通に仕入れた普通の人参なのだけれど、
オリーブオイルでじっくり低温で、
オーブンで火入れしただけなのだそう。
これはやってみなくては(^^)。
ふた品目が「鱒とチーズケーキ」。
エッジの立った切り口の鱒は、
一週間熟成させたものだという。
オリーブオイルがたっぷりと浸透してより円くなり、
でも鱒独特の香りは失われていない、
そんな感じの美味しさ。
ハーブあれこれを戴いたチーズケーキには、
そのレア部分の中にもエシャロットやディルなど、
ハーブを仕込んでいる。
鱒の身にそのハーブ入りチーズケーキをオンすれば、
ハーブの香りとチーズのクリーミーとを併せて、
熟成鱒をより愉しめるという寸法だ(^^)。
三品目が、題して「桜海老」。
旬にして豊漁と聞く桜海老。
トレビス、新玉葱とともに桜海老の香りを
たっぷり移したソースを纏ったパスタだ。
四品目が「青森県産 合鴨」。
加減よく火入れした合鴨が、そのまま旨い。
ソースは、スパイスを煮詰めたものだというが、
味わいは柔らかくて、
合鴨の旨味をすっとさらに持ち上げてくれる。
付け合わせのロメインレタスは味噌風味だ。
五品目は「根セロリとパイナップル」。
球状の部分は、パッションフルーツのムースに、
パイナップルのコンポート。
そこへ黒糖のサブレの帽子が載る。
足許にはパイナップルの皮を発酵させたピューレと、
根セロリのピューレとが交互に並ぶ。
帽子の上からザクっ!と切れ込んで、ひと口。
ナハハ、爽やか美味い(^^)。
さいたま市鹿手袋の住宅地に、
蔵レストラン「mukuroji」は、ある。
店名「mukuroji」は、先に書いた通り、
前庭を囲む大きな無患子の木に由来する。
蔵のリノベーションとそのデザインも、いい。
件の無患子に覆われた庭先も、いい。
そしてなにより、そのシチュエーションに負けない、
いや、ステージと一体感のある、
創意のお皿たちが、いい。
今度は、ゆっくりとディナーにも伺いたいけれど、
その際の最寄り駅は、
西浦和駅か武蔵浦和駅か、どっちだろう(^^)?
「mukuroji」
埼玉県さいたま市南区鹿手袋6-6-5 [Map]
048-711-7377
https://mukuroji.jp/