ふと、鮨が食べたいと思い付くことがあっても不思議は、ない(笑)。
京橋方面へ足を向けて、「京すし」か「目羅」へという手もあるなと腕組み思案。
頭の中のエリアをもう少し広げてみると、京橋公園のある光景が浮かんできた。
そうだ、正午過ぎ辺りにあの店を訪ねるのが妙案だ。
脳裏に浮かんでいたのは、
この木立越しに佇む鮨「石島」の建物。
看板建築よろしく、緑青の噴いた銅板の外壁がいい。
暖簾の上の軒下で睨みをきかせているのは、
鍾馗さんではなく、鬼瓦の類のようです。
梁とスラブとの空間を懐にして、
天井板の代わりに煤竹を配した意匠が目に留まる。
10席ほどのL字のカウンターには、
ひとときを思い思いに愉しむ顔が並んでいます。
淡路の真鯛に紀州勝浦の鮪。
大き過ぎず小さ過ぎず。
スマートなフォルムに小さく頷いたりなんかする。
枕崎の鰹に柚子の香るづけ。
赤酢の舎利は好みの仕立て。
鮪のづけに過ぎない柚子の香りがよく似合う。
極薄い白板昆布に透けた〆鯖が妖艶だ。
霞ヶ浦の白魚に函館の雲丹。
芝海老の玉子焼きを挟んで穴子、という流れも悪くない。
もう少し摘みたいと思えば、この時季恒例の蛍烏賊は、
富山滑川のスチーム仕立て。
フレッシュでいてふっくらとして、うん旨い。
魴鮄に続いて最後にいただいたのが、貝割れ大根。
軽い漬物になっていて、シャクっとした歯触りが面白い。
ああ、芽葱の握りも食べたいな(笑)。
「石島」本店のネタ箱は、カウンター埋込み方式。
客席からの目線に近いところにあり、
かつ古の硝子ケースのように視線を妨げることもない。
開け放った入口の向こうからも、春の空気が感じられます。
ちょうど一年ほど前の思い出を振り返ってみる。
小豆羽太の昆布〆に天草の小肌。
四丁づけにしたのも鯖ではなかったか。
黒い細帯が目印の細魚に黒い帯の玉子焼き。
銀座の外れ、京橋公園のお向かいに鮨「石島」本店はある。
「LA BETTOLA da Ochiai」の近所と云えば、頷く人も多いはず。
新富町のお店「石島」には、
開店早々に何度かお邪魔したけれど、
最近ご無沙汰しています。
でも、休暇の午後にはまた、
こちら本店のカウンターにお邪魔してしまいそうな、
そんな予感がする。
特に春にここを思い出すのはもしかしたら、
ビストロ「ポンデュガール」の前にある、
新富橋の桜の木の所為なのかもしれません。
「石島」本店
東京都中央区銀座1-24-3[Map]
03-6228-6539
http://www.sushi-ishijima.com/