随分と久し振りに阿佐ヶ谷の駅に降り立ちました。
思い出すのはやっぱり、大晦日にお邪魔した焼鳥割烹「川名」に粋な炭火焼鳥の店「鳥久」なぞ。
南側にもあれこれ気になるお店はあるものの、今夜も足を向けるは北口方面。
トルコ料理のお店「イズミル」は健在かなぁと思いつつ北口のロータリーを廻り込み、「スターロード」とその名を示す通りへと折れ入ります。
そのままフィットネスクラブを通り過ぎて、
右手をひょいと覗けば今宵の目的地。“自然食居酒屋”と冠した頭上の看板を見上げながら、
待ち合わせの時間までを過ごします。
間もなく二階へと階段を上がり、
右手の厨房・カウンターを横目に奥のテーブルへ。厨房の前にデデンと大きく掲げた黒板が目を惹きます。
まだまだ、最初だけでも麦酒の暑さということで、
暫く振りでーす!とグラスを重ねます。何気ないお通しの小鉢からイケてる酒肴がいただけそうな、
そんな気配が漂ってきます。
この夜メニューの筆頭が「新さんま」。
焼き霜造りにしてもらいます。これはもう、食べずして眺めるだけで、
誰にでも判っちゃう旨さ(笑)。
肝を和えたタレなんて、もうもうズルい。
炙った皮目の脂と芳ばしさに嬉しく唸ります。
こふいふのいただくと当然のように日本酒ってことになる。
勝手知ったるのむちゃんに酒肴の見繕いをお願いしつつ、
ついでにお酒の目利きも流れに委ねてしまいましょう(笑)。
一見その名の通り、ただのぶつ切りした蛸にも見える「真たこぶつ」。ところがその実、細かく入れた包丁が、
繊細な歯触りを与えてくれていて、
それが甘さを誘うような気にさせます。
肩越しに聞こえたジングルに振り返ると、
窓辺に下げた簾の向こうに、
ホームに止まっている電車の窓の灯りがみえた。そうだね、こんなにホームの近くなんだね。
鶉の玉子をいただいた、
ユッケにも見紛う素敵な眺めは、
「いわしのなめろう」。タタキ具合もいい塩梅なのが見た目にも判る。
そして口に含んだトキメキは、
そんな期待に十分応える美味しさなのであります。
いつぞやの御宿「舟勝」の「酢なめろう」も思い出しつつ、
そこへお猪口をつつっとね(笑)。
鰯がダブっちゃうけどといいよと賛同いただいたのが、
「真いわし梅しそ揚げ」。北海道から届いた鰯は、綺麗に抜かれたその骨が、
唐揚げとなってトッピング。
例えば、鰻の骨の唐揚げと比べれば、
成る程、繊細で嫋やかな歯触りがいい。
そしてその下に控えた梅紫蘇揚げは、
滲む鰯の脂と滋味を梅と青紫蘇との香りが、
一気に引き立てるニクいヤツ。
そこへお猪口をつつつのつっとね(笑)。
今度は揚げ物がダブっちゃうけどといいよねと、
お願いしたのが「特製栗の天ぷら」。なんだかね、笑っちゃうくらいのホクホクと、
渋皮独特の風味にただただ真っ直ぐな滋味。
ご同席のlara姐さんもご満悦のご様子です。
何度目かのお酒のお代わりをいただいて、
お迎えしたのはなんと「チキンカレーピザ」のお皿。カラッとした軽快な生地にカレー風味のチキンが、
要所要所でいいアクセント。
たっぷりチーズの代わりにたっぷり刻み海苔が、
ジャパニーズスタイルなのでありますね。
仕舞いには、軽く〆る感じで「新さんま握り」。先回りして獲っちまう輩もいるらしく、
不漁気味で脂のノリもいまひとつだと、
そんな風評も聞く今年の秋刀魚であるけれど、
なにを仰いますやらの気品ある美味しさだ。
阿佐ヶ谷北口のスターロード沿いのビル二階に、
自然食居酒屋の名に相応しき酒肴たちが嬉しい「やんたけ」がある。兎に角、季節の移ろいをこんな風に感じさせてくれるお店が、
身近にあるひと達がなんとも羨ましい。
店名「やんたけ」の由来を聞いた気がするのだけれど、
それがなんだったか思い出せないのはお酒の所為か。
それを確かめにも一度お邪魔しようかな(笑)。
「やんたけ」
杉並区阿佐谷北2-12-4 2F [Map] 03-3336-7575