一階に小諸そばの八丁堀駅前店の入った西勘ビルの横手側。
向かって左半分は、事務所のような作業所のような車庫のような、そんな雰囲気。
その横、右側半分の狭い間口に飲食店があったような気がする。
確か、石川屋とかいう焼きとり焼きとんの店であったのではなかったか。
そのお店は、一度も訪ねることがないままいつの間にかなくなって、急に小奇麗なバルにと変貌を遂げていました。
Italian Bar「guri」がオープンしたのは、14年の年初辺りのことだったようです。
硝子戸を入るとボトルの並ぶ棚があり、
その奥に向かう通路の突き当たりに厨房がある。主たる客フロアは二階にあって、
階段を上がっていくと意外と広い空間が待っている、
とそんな造りになっています。
壁のセラーに黒塗りの下がり壁。横の壁には、牛、豚、鶏のフォルムが描かれています。
「guri」のランチは、
そのすべてに三浦野菜がつくのがスタイル。シャキシャキの野菜に気の利いたドレッシングがよく似合って、
ぷち嬉しい瞬間です。
まず目に留まったのが、
15食限定としていた「たっぷりローストビーフご飯 温玉のせ」。しっとりとしたローストビーフの出来に遜色なし。
そこにたっぷりと載せたソースが、
ローストビーフの旨味をぐいっと引き出してくれて、いい。
温泉玉子を突き崩して纏わせれば、
期待通りのうんまいドンブリになるのです。
夏の頃には例えば、
夏季限定の「guri風真夏のマッサマンカレー」。マッサマンはタイカレーを指すようだけど、
オリエンタルなテイストでなく、
洗練と本気の仕立てを思わせる。
さらっとした中に奥行きのある滋味が滲んで、
程よくスパイシー。
辛すぎないのもいい(笑)。
あれ?さつま揚げ?みたいに仕立てたトッピングが、
豚ではなくチキンであるところも、
マッサマンゆえのことなのでしょう。
同じく夏限定では、
「冷たい”ベジポタ”ソースのカッペリーニ」なんて、
そんなメニューもありました。冷たく〆たカッペリーニに、
擂り流したコーン主体のソースがさらりと載る。
期間限定で人気を集めた麺や「七彩」の、
「幻のトウキビの冷やし麺」を先取りするよな、
小粋なお皿でありました。
偶には一階の小さなカウンター席でなんてこともあって、
頭上のグラスを見上げながらお皿の到着を待つことも。よく、こうして頭上に提げたグラスが見事に汚れている、
なんてことも少なくないけど、
ここでは綺麗に磨かれていました。
そうこうしている裡に急激に秋も深まっちまった、
そんな或る日。
久々に「guri」しようと足を向けて、あれ?って思う。何かが違うと思うも当然。
お店の間口が広がっていたのです。
「いつの間に広くなっちゃったんですか~」と訊くと、
9月頭の2週間ほどで改装したと云う。
二階の様子は確かめてないけれど、
どうやらファサード近くの部分のみ改装した模様。その為、混み合う前のランチは、
二階ではなく一階のカウンターが主体となりました。
気温がやや下がってきた中でいただいたのは、
例えば「牛ほほ肉のパプリカ煮込みとペンネのグラタン」。ゴロッとした牛頬肉にパプリカの風味がしっかりと沁みていて、
そのソースに浸ったペンネが旨い。
ハンガリーの皆さんは日頃から、
こんな風にパプリカ活かした料理を食べてるンかな、
なんて思ったりなんかして。
そして、グーラッシュの気配も漂います。
ペンネのグラタンは千変万化の様相で、
「牛ひき肉のペンネのグラタン ブラウンシチュー仕立て」、
なんておひる時もある。デミソースノリで挽肉十分のソースとペンネの取り合わせに、
和んじゃう程の安定感を思います。
最近は、サラダに代わって、
ひと口前菜とスープのお皿とのコンビとなっています。
八丁堀の雑居ビルの一辺に、
Itarian Bar「guri」の紅いテントがある。店名の「guri」の意味を訊ねたなら、
ひとつに、アグリカルチャーAgricultureの”グリ”
ひとつに、ピノ・グリPinot Grisの”グリ”。
そして、おめでとうを意味するauguriの”グリ”に由来しているそう。
きっと夜の部もよりいい感じに過ごせるンじゃないかと、
自ずとそう思う次第で御座います。
「guri」
中央区八丁堀2-21-5 西勘ビル1F・2F [Map] 03-6228-3066