そう云われてみると、コリドー街よりもさらに線路寄り、というか、山手線、京浜東北線に新幹線、今となれば上野東京ラインも走っているであろう高架の下になんだか怪しげな通路の入口がぽっかりと口を開けている光景には見憶えがある。
うむむ。
ひとりだと怖いので(笑)、のむちゃんやtakapuを誘って、大都会の陰裏への潜入を試みることにしたのです。
その入口の一方は、秦明小学校前から帝國ホテルに至る、銀座と日比谷の境界にある。
ガーガーと唸る獣が頻繁に頭上を通るため、思わず頭を屈めるとなんだか妙に萎縮した感じになる。
銀座・日比谷のいずれでもなさそうな、その結界の入口には、新橋への近道であると誘い文句が書いてある。そんな誘いに軽々しく応じ難くする妖気が通路の奥から漂い出てくる。
並びにある「INTERNATIONL ARCADE」には、DUTY FREEのショップ案内らしき表示が窺えるのに、その左手の西銀座JRセンター入口はなんとも殺風景だ。
意を決して入口に足を踏み入れると、右手の壁にくすんだ「インターナショナルアーケード」の文字。はて、この暗がりの通路が「国際的拱廊」だとは考え難い。
西銀座JRセンターなのか、インターナショナルアーケードなのか、どっちやねん。
いよいよ混乱してきているのに、不思議なことに足は通路の奥へ奥へと動いてしまいます。
と「寿司清」の暖簾が左手に見えてちょっとホッとする。
「築地寿司清」のチェーンの一角を占める暖簾なのだろかいや違うような気がするなぁと判然としない気分に包まれつつ歩みを進めると、閉ざされたバーの名前に続いて焼き鳥店のスタンドサインが目に留まる。その先にもちらりと赤提灯の灯りがあるように見えます。
その赤提灯には「まだん」とある。ああ、ここが目的地の韓国料理店だ。
「インターナショナルアーケード」は一体何処に行ったのかと訝りつつ、いよいよその扉の中へと運ぶ足を止まられません。
で、で、でた!そう思ったのは、対になった木彫りの面。
韓国の伝統工芸のひとつなのでありましょか。
さてさて一転して和やかな雰囲気に包まれた店内の一番奥のテーブルに集合して、こんばんは。とってもお久し振りのRomyちゃんもご一緒です。
韓国のビールといえば「hite」。
見慣れないOBビール社の「CASS」という銘柄もメニューに載っているのだけれど、このところ流通が途絶えているのだという。
偶々なのか、意外と根深い課題があるのかその辺りはよく判りません。
チヂミは何かいいかなぁと10種類ほどの中から選んだのが「えごまの葉チヂミ」。えごま油も話題のえごまの葉がたっぷり入ったチヂミが芳ばし美味し。
思いの外軽やかなのが印象的だ。
あれ?こんなところにもチャンプルー料理があるんだねとお願いしたのが「ゴーヤチャンプル(韓国式)。」目玉焼きが添えてあったりして、なかなか面白い。
辛さもほどよく悪くないけど、ちょっと炒め過ぎかもしれないね。
勝手知ったるのむちゃんがオーダーしてくれたのが「ケランチム」。それはつまりは、湯呑み的器が標準形の日式茶碗蒸しとは違って、どどんと豪快にドンブリで蒸し上げた「韓国式茶碗蒸し」。
たっぷりしたフルフルの中に潜む具も日本の茶碗蒸しとは違っていても、出汁の含んだ滑らか玉子には万国共通のホッとさせる美味しさが宿るのでありますね。
ここいらで、青唐辛子の焼酎「コチュソジュ」なんてのをお願いしてみる。
届いた急須の蓋を外すと、ああ、入ってる入ってる。恐る恐る口に含むと、青い香りと少々ヒリッとする辛さが旨い。
かえって焼酎の甘さが実感できる感じです。
攻撃的辛さのお店ではなさそうだと安心しつつ「チーズトッポギ」。ご存知、韓国のお餅を煮込んだ料理。
紅い色はしているけれど、辛さが尖がることなく円やかな甘辛い仕立て。
チーズのコクがいい感じの介添え役を果たしてくれています。
もういっちょ、炒め料理は「イカポックム」だったかな。コチュジャンあたりのタレに下足のコリコリがよく似合います。
胡瓜入り焼酎「オイソジュ」に続いて、マッコリもいただこうと改めてメニューを眺める。「ドンドン酒」なる一行が目に留まり思わず「どんどん吞めちゃうのかなぁ」なんて云いたくなる(笑)。
マッコリとの違いは正直判らないまま、するんするんと吞めてしまう。
意外と度数は高いようなので、穏やかな顔して危険なお酒なのかもしれません。
そしてやっぱり、最終コーナーはまずグツグツのヤツで。確か納豆がチゲスープによく似合うって笑った記憶があるんだけど、それで間違いないかなぁtakapu?
「ドンドン酒」にちょとやられていたかもしれません(笑)。
そして最後は「冷麺」で。極細にしてムニムニ食感の麺が愉しい汁なしタイプ。
これまた紅いタレがかかっているけれど、見た目と違う穏やかな甘辛さがいいね。
大都会の秘境、西銀座JRセンターに韓国料理「まだん」はある。オモニに訊けば「まだん」とは、中庭とか広場とか、広い庭とかの意味だそう。
みんなが集い食べ語らう場所になればいいなぁと。
そんな想いが「まだん」という店名に現れているようです。
西銀座JRセンターはどうやらJR東海が取り仕切る高架下スペースであるらしい。新橋側に抜けた先から眺めると高さが微妙に違う橋桁の様子が窺える。
一番銀座寄りを走っている新幹線のガードかな。
上野東京ラインは、どこを走っているのでしょう。
「まだん」
千代田区内幸町1-7-24 西銀座JRセンター内47号 [Map] 03-3580-8633