「中華そば」か「炒飯」かを食べ終えて、
界隈をふらふらと徘徊したりする。
天丼の「金子半之助」の頑なな行列に愕いたり、
同じ「金子半之助」でも別棟の天ぷらめし屋は、
意外なほど空いているなぁと覗いたり。
そんなことをしていた中途のちょっとした裏道に、
とんかつ店の灯りをみつけたのでありました。
気風のいい、こざっぱりした佇まいに白い暖簾。暖簾の真ん中に描かれた豚さんは、天真爛漫な笑顔をしています。
ガラガラっと引いた扉の先は、正面右手にL字のカウンター。
左手に二卓のテーブルというこじんまり。
コーナーテレビの下の壁に「カキフライ定食」の貼紙を見付けて早速、
厨房にオーダーの声を掛けると、オヤジさんの丁寧な受け応え。
ぴちぴちとする揚げ音を聴きながら、テレビのニュースをぼんやりと眺めます。
素ナポを添えたカキフライのお皿がやってきた。しっかりと深い揚げ色は、きりっとした油の温度を思わすもの。
やりようによっては、牡蠣の水分が飛び過ぎて、
スカスカの牡蠣になっちゃうパターンもあるのだけど、
その辺りのタイミングなぞの見極めに抜かりないようで、
齧れば例の、いい感じの牡蠣汁が零れ出るのでありました。
別の夕べ、人形町図書館に寄ってから、ふたたび本町方面に足を向ける。
硝子越しに覗いた「大勝軒」のオバちゃんは、テーブルに座って夕刊を広げてる(笑)。
とんかつ食べたい気分満々のままいつぞやの暖簾を払います。
改めてみる「かつ平」のお品書きの品目は、都合五品にて。謹厳実直真実一路な書きっぷりに思わずいいねと呟きます。
オヤジさんは、貸切宴会のやりとりをやっぱり丁寧な気遣いでもって電話応対中。息子さんと思しき兄さんが淹れてくれたお茶を両手で包んで啜りながら、
出来上がりをゆっくりと待ちましょう。
「カツライス定食」のカツもこんがりとした揚げ上がり。齧り付くと音程の高いサックリ音。
でも焦げ臭さの心配は気配もない。
所謂きつね色が揚げ物王道だとは思うけど、
きゅきゅきゅと温度高めの油で攻めて、油切れよくして余熱で仕上げるってのも、
職人技なのだなぁと思った次第です。
日本橋本町の裏道にそっと佇む、とんかつ「かつ平」。帰り際、今はなき上野のとんかつ「平兵衛」をちょっと思い出しつつ、
どなたかの名前に「平」の文字がつくからなんだろうなぁと思いつつ、
オヤジさんに店名の由来を訊いてみたら、意外な応えが返ってきた。
開店の際に、当時の平塚市長が訪ねてきたことをもじり、
平ツカをひっくり返して、カツ平、かつ平(かつへい)としたらしい。
その市長とは深い関係があったのですねーと訊くと、
いやぁそんなことないんですけどね、って。
あれ(笑)?
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「かつ平」
中央区日本橋本町1-2-3 03-3243-6858