音楽専門書翻訳者といえば、
「ザルツブログ」でもお馴染みのsepp先生。
音楽を中心とした文化大国にして、
工業に並んで観光産業も盛んなオーストリアでは、
国家資格を持たないと観光ガイドができないと聞く。
ガイドのライセンスを持つのは全オーストリアで、
2,000人ほどと狭き門らしく、
その中でザルツブルクの日本人ガイドは、
それでも20名ほどいるという。
そのsepp先生は、
元モーツァルテウム音楽大学・学長であられるところの、
Prof.ギュンター・バウアー博士の著書「Mozart Geld Ruhm und Ehre」、
つまりは、モーツァルトの収入支出本の翻訳をしたことで、
モーツァルトの暮らし振りというか実生活の機微というかにもお詳しい。
「みなさん、いーですか~、コンスタンツェが悪女だったというのは、誤解です(笑)!」。
13年の11月には、北千住の荒川河川敷縁にある放送大学・足立学習センターで、
「モーツァルトの生活、収入支出。コンスタンツェは悪女ではなかった!」と題する、
公開講演会を満席の座で行って、
世界三大悪妻のひとりとして知られるモーツァルトの妻、
コンスタンツェの浪費家説をひっくり返した。
翌年には米倉涼子をキャスティングした、
コンスタンツェの悪女伝説についての番組がBSフジで放送されたりもしていたね。
そして、ふたたび放送大学へと向かった14年初冬の頃。
翻訳作業はとっくに済んでいるのに、何故だか出版への進行が滞っているという、
sepp先生の二度目の講演のタイトルは、
「ザルツブルクの歩き方~モーツァルトと映画サウンド・オブ・ミュージックの街~」。
スライドを適宜使い、常日頃のガイドの片鱗を滲ませる考えられたコース取りで、
行ったことがあるひともないひとも、北千住に居ながらにして、
ザルツブルクの町を巡った気分にさせてくれるという有難いものでした。
でも、例の本が出版されていたら、
講演の内容も違ったものになったかもしれませんね(笑)。
講演会ミッションが済んで、肩の荷の下りたsepp先生ほか一同は、
北千住からつくばエクスプレスに乗り込んで浅草駅で下車。
国際通りをスタタっと進み、辿り着いたのは、お久し振りの「龍圓」であります。
ども!と顔をみせてくれた栖原シェフは、なんだか忙しそう。
当初予定の一階の席がうまく調整できずに、二階のテーブルへ。二階にこんな丸窓が設えた部屋があるなんて知らなかったなぁ。
お昼だけどおつかれさまの乾杯しましょと「青島啤酒」。癖のない吞み口と味のある翠のボトルに一種の風格を思います。
まず登場したのは、ご存知「ピータン豆腐」のカクテルグラス。上から覗けば、エスプーマを通じてムースとなったお豆腐が、
下から覗けば、ざく切りのピータンとご対面。
皮蛋独特の滋味と香りとを豆腐のムースがまろやかに包んで唸らせます。
「ヤリイカの老酒漬けサラダ仕立て」は、その名の通り、老酒のタレが肝。霜降りするように柔らかくボイルした新鮮な槍烏賊を妖しく引き立てます。
さてはシェフ、烏賊釣りに行ったな、なんて考えてはいけません(笑)。
いつぞやに初めて目の前にして面白くも感心した「牡蠣の燻製」がふたたび目の前に。スープ碗にラップを張るようにフィルムをピンと張って、その上に牡蠣の身が載っている。
一瞬牡蠣が中空に浮かんでいるようにも見えるのがまず愉しいところ。
そしてフィルムの所々に穴が開いていて、そこから芳ばしい薄煙が漂い出る。
半生状に水分の抜かれた牡蠣を薫香のベールが包む。
はい、美味しゅうございます。
「よだれ鶏」は、真空パックに入れ湯煎しての、最近定番の低温調理。自らの旨味をその中にしっとりと閉じ込めたところに、
きりっとした辛味の芳ばしいタレが利いています。
「青島啤酒」から紹興酒に替えたところに、「焼き餃子」。そこに添えてくれたのは、米油でつくるという特製のXO醤。
さらさらっとして旨味を含んだXO醤を使うと、
ベッタリしたラー油が妙に野卑なものに思えてきます。
おおお、とみんなの顔に感嘆符が浮かんだのが、秋トリュフと毛蟹のかに玉。ふわりと薫るトリュフをおずおずと玉子に載せて匙を動かす。
官能的にして澄んだ味わいでございます。
那須和牛と舞茸とアスパラの炒め物に続いてやってきたのも、ズルイやつ。
それって絶対に似合うよね!と思わす「麻婆白子」。ぱっと見では、普段通りの豆腐の麻婆かと思わせるような、
そんな洒落の利き具合もまた愉しいであります。
「上湯炒飯」は、まずそのまま玉子が米粒を薄く包んだ軽やかさをいただいて、
やおら上湯スープを注ぎ込む。炒飯もスープもお互いがお互いをより美味しくしてくれているような気がします。
Mぞうさんのナイス注文は、裏メニュー的「具なしソース焼きそば」。濃密な黒褐色にして、ながーい麺が個性的。
クドそうな見た目をニヒヒと笑って裏切るようなあっさり感が愉し旨いんだ。
昼酒に一瞬やられていつものように眠り込んでたH氏も既に復活して(笑)、
デザートの「苺とキャラメルの杏仁豆腐」のグラスを手にする。杏仁豆腐と甘さ控えたキャラメルって、美味しいね。
云わずと知れた浅草・国際通りは栖原シェフの店、
中國小菜「龍圓」にまた来れた。3年ほど前にお邪魔した時の日記を振り返ってみたら、
ファサードに一層の風格を与えていた緑青色の看板が今はない。
どうしちゃんたのでしょう。
颱風の強風攻撃を受けてしまったりしたのかな。
口 関連記事:
中國小菜「龍圓」でピータン豆腐牡蠣老酒漬燻製蒸オレンジ白菜(11年12月)
「龍圓」
台東区西浅草3-1-9 03-3844-2581
http://www.ryuen1993.com/