看板建築の銅板が吹いた緑青の色のようなタイル。側面の二階の窓上の壁には、「大勝軒」と店名を示したタイル張り。
同じ緑系統の縞に染めた日除け雨除けのテント。その向こうにコレド2の頂が望めます。
往時は瀟洒でハイカラであったであろう建物も今は、周囲の高さに囲まれている。陽射しに文字の掠れたアクリルの看板。 入口硝子扉の紅く丸い取っ手と一箇所絞った目隠しのカーテン。 いいね、いいね。 屋上の小屋は何に使っているのでしょう。
窺うように硝子扉を押し入ると、まだ先客もなく、まったりモード。内壁にも厚手のタイルを使った意匠で、 何気になかなか凝っている。 見上げた天井の造作もちょっと面白い。 どなたの設計によるものなのでしょうか。
両面に記したメニューから、まずは昼夜定番モノを物色します。 町場の中華料理店のメニューの並びは、 大概こうくるものだよねと納得しながら、 まずは筆頭の「中華そば」をお願いします。いただいたドンブリの景色もまた、正しき素朴さ。 ナルトのスライスは見当たりませんが、 きっとその系統ではそもそもないのでしょう。
鶏ガラと野菜たち主体と思しき澄んだスープに和むひと時。過剰な脂や塩分、濃厚な味付けは此処にはない。 化調が甘さを演出していたとしても、 それを織り込んでなお、温厚篤実な一杯であります。
今度は、メニューを裏と表をくるくる回し見て、 「炒飯」に「揚げシューマイ」を奢ってしまおうかと腹積もる。 パラパラっとして、ご飯の一粒ひと粒を玉子と油で薄くコーティング。何気ないけど、それが基本形だよねと安堵する。 そんな頃、女将さんや大将は、大相撲の逸ノ城の動向を注視中(笑)。
「揚げシュウマイ」も素朴な美味しさ。包んだ皮が薄くカリっとする。 そして、その中から何事もなかったかのように顔を出す肉のあん。 あ、瓶の麦酒もお願いするんだった!
1933年(昭和8年)創業の日本橋本町「大勝軒」。それは、いつまでも其処にあっていて欲しいと思う佇まい。 青木 健さんの「ホントにあったラーメン劇場」が毎回楽しみな RamenBank によれば、 東池袋系とも永福町系とも違う、人形町系と呼ばれる流れを汲んでいるそう。 茅場町の「大勝軒」や横山町の「大勝軒」、 浅草橋の「大勝軒」が同じ系統の兄弟店だということになる。 独特の極細麺が不思議な魅力だった人形町三丁目の「大勝軒」は、いまはもうない。 早いこと浅草橋のお店にも行ってみなくっちゃ。
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「大勝軒」 中央区日本橋本町1-3-3 [Map] 03-3241-2551
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