夜ともなれば、そのトンネルに椅子テーブルが並んで、 いい感じにオープンエアな宴席になるのだけれど、 おひる時は、それがなくってちょと寂しい。煉瓦を積んだ高架の壁面に積年の味わいを思います。
開店直後の店内はまだ、お昼の賑やかさの前。 高架の描く半円形がそのまま天井になっている様子を眺めるのが、 なんだか愉しい。そうそう、休日のお昼のお楽しみは、タイビール「シンハーSHINGHA」でね。
クリアファイルに収まったお品書きには、迷うこと必至のラインナップ。 そんな人のためにもセットメニューあれこれがある。 セットメニューにも迷っているうちに何故だか、 単品二品を注文しようという気になりました(笑)。
別枠メニューの「ガパオガイ カイダオ(鶏バジル炒め飯)」。粗いそぼろ状に炒まった鶏肉をバジルの風味と辛味でざっくり纏めたシズルなヤツ。 思わず一心不乱に匙を動かしてしまう。 軽めの辛さにも、目玉焼きの黄身のまったりや添えた胡瓜のひと齧りが、 間の良い合いの手となりました(笑)。
もう一品、汁モノ系でと「クゥイ・テェイアオ・カー・ムー」。クゥイ・ティアオでタイラーメン、 カー・ムーは豚足、というような意味らしい。
醤油色のつゆに浮かんだ、 ひもかわうどんのような麺の上に煮込んだ豚足が載っている。 米粉の麺(粿條)と思われるそれは、見る間にくっ付いて思うように剥がれない(笑)。 こふいふ時にステンレスの箸は難しいなと思いつつ、 つゆに解して啜ります。うん、実にあっさりしつつ、甘さ漂うよなスープ。 豚足からの雫がちょっと零れているだけで、脂っ気なく、 ナンプラーやビーンズソースも色付け程度な感じ。 八角の香りとともにヌルっとした独特食感に煮込んだ豚足も見た目程濃い味じゃない。 辛味か酸味かをちょっと足そうかと思いながら、全部啜ってしましました。
有楽町高架下の人気タイ料理店「あろいなたべた」。あろいอร่อยは、タイ語で”美味しい”という意味らしい。 客が増えるごとに喧騒がエコーして、 心地いい猥雑な空気にすぐ、気分がアジアの片隅の屋台に旅してしまう。 時折頭上から、ゴゴゴゴゴっと電車が通過する音が降りてきて、ハッとする。 この雰囲気は、なかなか得難いものですね。
そんな「あろいなたべた」有楽町が、 9月から内神田に移転してしまいました。 昭和の匂いの満ちた有楽町の高架下から、 櫛の歯が欠けるように店が消えていく。 そんな予感に寂しさを禁じえません。
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「あろいなたべた」有楽町 千代田区丸の内3-7-11 [Map] 03-5219-6099 http://www.tabeta.com/ [内神田に移転]
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