それは確か9月の終わり頃。 重量感たんまりの歌舞伎座タワーを見上げる手前にはもう、 歌舞伎座の庇が伸びていて。でもまだ木挽町通りには仮囲いの連なりが続いていました。
仮囲いに沿って往くと見えてくるのが、 アメリカングリーンのテント地の庇。そうそう、あの喫茶店とは「AMERICAN」のことなのです。
物凄く久し振りだし、お邪魔していたのはほとんどモーニングの時間帯ばかりだし。 でも一週間振りにやってくるような気分で(笑)、ドアを開きました。 ちょっと早い時間帯にも拘わらず、もうすぐ満席になりそうな混雑具合。 テーブル席のひとつに腰掛けました。
注文を済ませてからメニューから視線を上げたら、 向かい側に見知った顔がある。 おお、怪人現る! 小さな声で、お久し振り~と目配せし、手を振ります(笑)。 貴公子はどうやら、「ビーフシチュー」あたりを召し上がっているご様子であります。
と、10数種類あるサンドイッチセットから選んだ「タマゴサンド」がやってきました。懐かしき雄姿、ともでいいましょか。 どどどーんとSEが鳴りそうなたっぷり感はそうそう拝めるものではありません。 今はなき、河原町「コロナ」の「玉子サンド」とは随分とノリの違う、 ほぼ円形を描いた粗め仕立ての玉子ペースト。 それをなんとか包み込むためにあり得ない厚みでカットされたパン。 以前はどうやって食べたのだっけかなぁと思いながら、しばし固まる(笑)。
試しにそのまま齧ってやろうとトライするも、 玉子がはみだすばかりで思うように参りません。素直に諦めて、強引にオープンサンド状態にして挑みます。 これまたてんこ盛りのサラダのケアも行いながら、 額に汗を滲ませ食べ進むも健闘虚しく(笑)、 敢えなくお持ち帰り用のフードパックを所望することに…。 尤も、ほとんどのお客さんがそうしているのですけどね。
それからまたあっという間に半年の月日が流れて、 ふと、怪人も召し上がっていた「ビーフシチュー」を思い出し、東銀座の改札を出る。
すると、ずっと閉鎖されていた歌舞伎座側の壁が既に取り払われて、 不思議な解放感を醸してる。 歌舞伎座タワー地下2階の「木挽町広場」は、3月に入ってすぐにオープンしていたらしい。 毎日通う駅なのに知らなんだ。 「木挽町広場」の一角にある「歌舞伎茶屋」のお品書きを覗くも、かき揚げそばはない模様。 歌舞伎座が新開場しても、 「歌舞伎そば」所望のお客さまは歌舞伎座の裏手へどうぞ、 ってことなんだなぁと思いながらエスカレーターを上がる。 するともうほとんどの仮設が取り払われて、 木挽町通りはすっきりとした広さを呈していました。
今日は、怪人の姿がないなぁとキョロキョロ探しつつ(笑)、 変則横並びのふたり席に腰を据え、「ビーフシチュー」をお願いします。 やっぱりてんこ盛りのサラダに、うむむと唸って戦闘態勢。 千切れそうで千切れない大きなバゲットにマーガリンを塗りたくり、 シチューをそっと啜っては、バゲットに齧り付く。
コクと酸味のバランスがなかなかのシチューで、 過剰にべったりした仕立てでも、物足りない味わいでもなく、 すっと素直にいただけるシチュー。こちらは無事にすべてをいただくことができました(笑)。
目を瞠るがっつりボリュームのサンドイッチで人気の歌舞伎座裏、喫茶「AMERICAN」。ちょうど正午頃にパン屋さんが焼き立てのパンを抱えて店内を通り、厨房に運び込む。 焼き立てパンを手にしたご主人が「あちち、あちち」と大声を上げる。 どうやらお昼どき恒例のパフォーマンスになっているようです。
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「AMERICAN」 中央区銀座4-11-7 [Map] 03-3542-0922
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