左手に厨房に向き合うカウンター。その逆の波打つような意匠の壁面にもカウンターが据え付けられていて、 その上の壁は内照式になっている。 無作為に開けられた小さな穴からも灯りが溢れるという寸法だ。
「土星庵」のおひるメニューは、 石臼手挽きの二八そばの「もり」か「かけ」に、 いなり寿司と小鉢がつくというのが基本形。 「もり」を大盛りでお願いしました。
決して駄洒落なんか言い放ちそうもないような真摯な面持ちの若き店主が、 きびきびとした所作で湯掻いた蕎麦を笊に掬って、 水を切るために笊の裏側をひたひたと叩く。 なんかもう、既に美味しそう(笑)。
綺麗な盛り付けで、「もり」の膳が差し出されました。ああ、期待に違わぬその蕎麦の美しさ。
石臼で挽いた挽きぐるみのそば粉の魅力がそのまま活かされている感じ。噛めば仄かに甘くつるっとして、すっきりした旨味のつゆがよく似合う。 美味しゅう御座います。
「十割そば、少しあります」と額にあった文字が気になって、 ふたたびの裏築地は、迎え盆の暑き正午前。
「十割そば」の代わりにあったのは、 “本日のそば”の表示と「冷やかけそば、始めました」の貼り紙だ。 こんな盛夏に「冷かけ」とは、なんてオツなのでありましょう。 限定5食とあるので訊ねると、まだ用意の分がありますと。
ひたひたのつゆの中央に梅肉と貝割れ大根。あああ、なんて涼しげなのでしょう。
まず冷やかけのつゆをひと口してみると、綺麗に引かれた出汁の旨味。こうでなくちゃねと呟きつつ、啜るそばは山形県高畠産の「でわかおり」。
銀座「流石」の「ひやかけそば」に初めて唸った時の記憶が蘇る。 きっと季節限定だろけれど、わざわざ「流石」に赴かなくてもよいと考えると、 ますますお得で美味しい気分にニヤついてしまいます(笑)。
さらに涼味を添えてくれたのが、黄色い西瓜。これをランチにいただける機会って、そうあるものでもないですよね。
「SO BAR Sakuma」の昼間の姿は、石臼手挽き二八そば「土星庵」。店主の持つ真摯な雰囲気とぴたりと寄り添うそばの魅力は何気に出色のもの。 時々足を運んでは機会をみて、店名「土星庵」に含む意図を訊ねたいな。
口 関連記事: 築地「はじめ鮮魚店」で 魚屋の気風と生まぐろ丼真あじづけ丼(12年07月) 手打ちそば「流石」で つーっと昼酒わさび海苔焼き味噌かけそば(10年01月)
「土星庵」 中央区築地7-14-13 [Map]
column/03294