アーケードには「山田うどん」があったんだねーと懐かしいものをみるように眺めつつ、 そのままアーケードの傘を抜け、蒙古タンメン「中本」の前を通り過ぎる。 すると、大井町の狭い店「のスた」にみる「凛」の文字が此処にも。 ああ、蒲田ってやっぱりいろいろ徘徊し甲斐があるなぁと感心しつつ、さらに真っ直ぐに。
その先はもう、大きく右にカーブして池上駅方向へ向かう池上線。 と、その手前で揺れる白い暖簾。 鳥から揚げの店「うえ山」に到着です。
元喫茶店か、もしかしたら床屋だったのかもなんて思わせる外観が、いい。 暖簾には、娘さんが描いた可愛い鳥の画が和ませて、いい。
カウンター横並びでの待ち合わせは、蒲田の女王ことkimimatsuさんに今日はケンタ食い放題の記念すべき日なんやでぇとのっけから仰るグヤ兄さん。 そうなんだ、知らなかった~。 そこへ、どうやら明後日の方向へ突き進んじゃったらしい(笑)、唐揚げといえばの油ちゃんが汗掻きやってきて、全員集合です。
まずは、お通し選びから。 目の前に繰り広げられているお惣菜のあれこれから三品を選ぶのが「うえ山」の習わし。女将さん手作りのお皿たちへ目線きょろきょろと、ちょっぴり迷いつつ。
見つけりゃ外せない茄子のお皿は、茄子とピーマンを味噌で炒め煮したやつ。 そして、鶏屋さんでは是非いただきたいレバーの煮物に定番のポテサラ。どれもがそうといえばそうだけど、どうしても酒のあて的選び方になっちゃうね(笑)。
ビールの後はやっぱり、これで呑りたい「コダマサワー」。豪快に注ぐ、焼酎濃いめが似合います(笑)。
ご主人がまず届けてくれたのが、「砂肝」。 それは麗しき素揚げの照り。噛めば絶妙な歯応えと溢るる旨味。
続いてやってきたのはなんと、「首」。見ようによってはグロテスクだけれど、食べ尽くしてあげるのが、 殺生することで生きながらえている者の務めだなんて思ったりなんかして。 じっくり火を通しているがゆえ、意外と解れ易く、 よく動き活躍している部位の胆力をポキポキいただく感じでございます。
さて、セットでお願いしていた「から揚げ」のお皿がご主人から手渡されました。 セットというのは、じっくり素揚げしたムネとモモ。
半裁した熱々のモモ肉に慌てて噛り付く。綺麗な脂がそそる滋味と相乗して唸らせる。
順番としたらムネからでしょ、とKimimatsuさんにツッコまれ、 そっかそうだねーと応えつつ、今度はそのムネ肉の素揚げに挑みます。
香ばしさに包まれた柔らかでかつしっかりとした繊維質。歯の先を受け止める度に溢れる、正直な旨味。 いいね。
手羽先に続いて届いたのが、 素揚げの「皮」。齧れば期待以上の軽妙さのパリパリが愉しめる。 鶏が苦手なヒトは、このトリハダがまず厭なのかもしれないけど、 この愉しさが味わえないなんて、残念かも。
そして、鶏のあれこれをひと通りを楽しんだ後の仕上げが、 囓ってしゃぶってした骨を集めて炊いたスープ。シンプルな鶏骨スープの有り難味。 共に味わう仲間に嫌いな奴がもしも混じっていたなら、 こんな素直にしみじみとは啜れないかもしれません(笑)。
鶏を素のまま味わいつくす実直な魅力溢るる、から揚げの店「うえ山」。魅せられ通った、今はなき「那珂川」の味を失いたくないと一念発起したご主人の想いと、 それをそっと支える女将さんの醸す雰囲気もまた魅力的です。 そして、びば☆蒲田!
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「うえ山」 大田区西蒲田7-59-1 [Map] 090-3572-8700
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