大きな躯体に載せたひと懐っこい表情で、軽いノリの日本語を喋る店の主人はイラン人。 日本に来てもう20年近くなるのだそう。 「本格的ペルシャ料理」とあるメニューから、どれでも出来るの?と訊くと、これとかそれとか煮込んだ料理の幾つかはランチではデキナイノヨ~、と仰る。 えー?そうなの~?と応えて、ケバブの仲間「キャバブ バーグ」をお願いしました。 白ワインのグラスもついでにね。 サラダいる?とこれまた軽いノリで訊かれたので頷くと(笑)、 やってきたのは、胡瓜やトマトなどを賽の目に刻んでサラダオイル系のドレッシングで和えたヤツ。塩と酸味がちょっと強いけど、口開きには悪くない。 なんだか野菜を沢山摂れた気になってくる。
ケバブというと、塊りから削いでいただくドネルケバブを思ったりもするけど、 「キャバブ バーグ」は、ひょろっとしたフォルムからも判るように、 つまりはラムブロック肉の串焼きだ。 漬け込んだハーブの香りとラム肉の香りとが焼いた香ばしさと伴って味蕾を擽ります。 焼いたトマトやポテトフライ、ピクルスなんかが付け合せ。 その皿をおかずにと添えてもらったのが、「ライス」。 ライスといってもそれは、如何にもな長粒米。 ターメリックで炊いた黄色と白のコントラスト。大層美しいのだけれど、ジャポニカ米を食べ慣れている身には、 ぱっさぱさの食感でもそもそする中に甘さを見つける感じ。 添えてくれていたバターに追加をもらって、 溶かしつつ和えつつするといい具合になってきます。 でも、ケバブと異国ライスのランチは、気分も変わっていいよね。 別の週末ランチには、 13種類のドライ野菜を空輸、戻して煮込んだという「ホレシ ゴルメ サブジ」を。 ホレシ、は煮物のことだ。 ミントなんぞに赤大豆、ラム肉。ドライ野菜と訊いて、なるほどなぁとお皿の表情を凝視していると、 だんだん茶殻をスープにしちゃったようにも見えてくる(笑)。 うんうん、面白いなぁと店主に告げつつ、スプーンを動かします。 おお。 食べた最初の食感も茶殻のスープみたいだ(笑)。芝生のような風味が、じっくり味わううちに複雑な風味の折り重なりであることが判ってくる。 なんか、レモングラスのような風味を覚えたり。 調理前の乾燥野菜のミックスを見せてくれたけど、 パセリとか西洋ねぎとかコリアンダー、フェネグリークの葉なんかが入っているらしい。 これも定番なペルシャ料理だそうで、繰り返し食べるうちに嵌りそうな予感もいたします。
開け放ったドアの向こうから、通りがかりの子供が発する声が聞こえてきました。 この看板こどもが鍋に入っちゃってる〜、と。 そこで、改めてお喋り好きな店主に看板の意味合いを訊ねてみました。 その応えはひとつに、トマトを積み上げたオジサンの写真はトマト料理が多いのです、ということ。 そして、ラーメンはあまり難しい料理じゃなく、子供でもできると、それよりもココの料理は優れているのです、と云いたいらしい。 多分に両隣をラーメン店に挟まれた立地を気に掛けての考えだけど、そんなことを堂々と云われては、世のラーメンフリークに怒涛の非難を浴びるに違いない。 ラーメンの深みをまったく判ってないようなので、では一体何軒の何杯のラーメンを食べたのかを問うと、それとは違う事柄をわーっと喋る。 旅先のラーメン店の厨房で、ちょい足ししたスープを褒められた顛末とか。 仕方がないので、主だったラーメン店へ連れまわしてやるから覚悟しろ!と云ってやる。 すると、それじゃ、貸し切りでベリーダンサーを呼んであげるよ、と(笑)。
そんなこんなで、なんども通ったペルシャ料理の店「BiBi Sakineh(ビービー・サキネ)」。店主に貰った名刺に驚いて訊くと、何度かお世話になっている長原商店街の洋服直しの店の経営者でもあるという。 その洋服直しの店は、隣家からの火事で焼けてしまい、移転することに。 移転先へと革コートの直しをお願いしにいくと、当の店主が座っていました。 おお、社長!ちょっとご無沙汰!と握手をしながら、馬込のお店にいなくていいの?と訊くと、 これまたびっくりの返事を聞くことに。 店、ヤメチャッタよ。 元々ひと通りの多いところではないし、このところの内食傾向などなど影響もあってか、来客が落ちたらしい。 ああ、なんだかとっても残念。 夜にも行っとくんだったな、もっと別のメニューも試しておくんだったな。 口 関連記事: らぁめん「醤道」で 醤屋の名残りと進化を示す三本立て道・金・白(09年04月)
「BiBi Sakineh」 大田区南馬込1-10-5 1F [Map] 03-6303-8919 [閉店]
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