開店を祝う胡蝶蘭を横目に扉の中へ。間口はその両開きの扉のサイズと同じ。 そう、両腕を広げたくらいのね。
小さなテーブルの脇をそのまま奥へと進むと、 突き当たりがカウンターになっていて、その向こうがおそらくキッチン。 左手L字にスペースがあって、そこにもテーブルがいくつか。カウンター回りの幕板には、焼印の入ったワイン木箱の板が張り込んであるね。
白のグラスをいただいて、「ブランダード」。 豚のリエットもレバーのパテも好物だけど、 鯛、鱸なんかの白身魚のペーストもまたいい。滑らかな口当たりの中に、旨みがじっくり凝縮してる。 微塵切りしたオリーブのアクセントも利いてます。
「魚介のキッシュ」は、細やかなオニオンと帆立やエビなんかの魚介と玉子とが、 幾重にも繊細に織りなして、旨い。
メニューでみつけるとどうしても注文みたくなってしまう「牛ハチの巣煮込み」。ハチノスの滋味がほどよく滲んで、さらさらとそしてコクあるソースの魅力。 勿論、ハチノスに臭みなんてない。 ひよこ豆のほっこりがいい合いの手になっています。 あれ?結局何杯呑んじゃった(笑)?
「ここって以前はなにがありましたっけ?」と訊ねたら、 「ハンコ屋さんだったみたいですよ」とシェフ。 そうか、ハンコ屋さんがかつてあったような、そんな気がします。
暫くすると、ランチが始まっていました。 店頭の黒板には、「ご用意数10食」とある。 つまりは、日替わりであろうその10食だけのランチタイムなのであります。
例えば、酷暑に酸味が嬉し涼しいスープ「ガスパチョ」に始まって、 「牛バラ肉赤ワイン煮」のプレート。ほろほろと崩れては、ぎゅっと閉じ込めた旨みを素直に伝える牛のバラ。 きりっとメリハリに利いたワインソースに、バターライスがまたよく似合うのだ。
例えば、 夜にもいただいた「ブランダード」に甘酸っぱいトマトを添えて。 「ワタリガニのクリームスパゲティ」の濃すぎないまったり仕立てに感じ入ります。 「豚ロースのグリル エシャロットビネガーソース」なんて時もある。 ロースといっても脂控えめのお肉。 エシャロットのやや甘さにビネガーの酸味が優しく利いている。 全体に酸味づかいの塩梅がよいのだね。
八丁堀の路地で狭い間口のバーガンディ、 Bistro & Bar「Un Carnet(アン カルネ)」。シェフ曰く、「Un Carnet」は手帳という意味と合わせて、 回数券という意味も持つ。 「回数券を持つかのように繰り返し通ってほしい」という気持ちを、 “Un Carnet”に込めているそうです。
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「Un Carnet」 中央区八丁堀3-20-8[Map] 03-3551-1233
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