掛かりつけの病院で診察を受けた後、桜田通りまで戻った高輪台の交差点で立ち止まる。
さて、どこでおひるしようかな。
と、五反田寄りの通りの向こうのやや遠く、目に留った文字がありました。
それは、「梅乃家」と縦書きの文字。
随分と久々だけれど、偶には竹岡式のラーメンもいいぞと早速点滅し始めた信号をダッシュで渡ります。
硝子越しに覗くおひるどきの「梅乃家」のカウンターは、落ち着いた空気。
近所のおっちゃん風の背中が、昼ビールをやっつけています。
華奢でスリムな券売機でぽちとしたのは、竹岡式にきっと真っ直ぐな「ラーメン」に「のり」のトッピング。
メニューを改めてみると、以前からあったのか「塩」や「味噌」、さらには「担々麺」なんてものまである。
それも”竹岡式”なのかなぁ。
お母さんにチケットを渡すと、ビール注文している訳でもないのに、しらたきや千切りの昆布、チャーシューの欠片を煮たお通しの小皿をどうぞどうぞと返してくれる。どうもどうも。
お待ちどーさまと目の前に置かれたドンブリには、黒い、と表現しても間違いじゃないスープと一面に浮かぶざっくり刻み玉葱。
その玉葱と一緒に蓮華で掬ったスープをズズと啜れば、なはは、そうそう、チャーシュータレの風味。
ご存知の通り、竹岡ラーメンのスープは、いわゆる動物系野菜系などを炊いたスープをとらず、チャーシューの煮汁をお湯で割っただけのもの。
それじゃ味気ないんでしょうと思うのも尤もだけど、それがどうして侮れない。
若干甘い風味におや?とする瞬間もあるものの、加減のいいコクと旨みに次第に合点がいってくる。
そんなスープにきゅきゅとした極細い麺という取り合わせ。
なーんか、いいんだなぁ。
夜にも寄り道して、今度は「チャーシュー麺」に「チャーシュー」と「玉ねぎ」をさらに載せ。
普通の玉葱を普通に刻んだものだったら、結構辛いことになっても不思議はないけれど、こんなたっぷりの玉葱を蓮華一杯に啜っても、まったくもって辛くない。
辛くないどころか、甘くさえある。
水に晒したりすればこふいふ薬味にできるのかなぁ。
そして、チャーシューを煮たタレがスープになるのだから、そのチャーシューとスープとの親和性がばっちりなのは間違いがないところ。
都内で竹岡式らーめんが愉しめる稀少なお店、高輪台「梅乃家」。
柔和な表情のお父さんに訊けば、内房線「上総湊」最寄りの竹岡「梅乃家」とは、竹岡の店のおばあさんと高輪台の店のママが一緒に習った(?)関係だという。
あっちは漁師町だからちょっとしょっぱいのに対して、こっちはどっちかというと甘い味付けだというところと、なにより竹岡「梅乃家」では、生麺でなくて乾麺を使っているところが違いであるそう。
なかなか内房へと足を伸ばす機会もないけれど、いつか竹岡の「梅乃家」も訪ねてみたいな。
「梅乃家」
港区白金台2-26-13
[Map] 03-3447-5727
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