ひる時に八重洲ブックセンター辺りにいたりすると、そうだ、京すしに寄っていこう!とその度に閃く。
尤も端からその流れを狙っているのだけど。
中央通りにも面した、ひと区画まるまる仮囲いに囲まれたブロックにはなにがあったのだっけなと考えながら、「京すし」の暖簾を潜ります。
額縁に入った「鉄火丼」とか「いなだ丼」といった書を横目にね。
正午を廻ると、んー15分お待ちいただきます、と大将に告げられてしまう時間帯になるので、そのちょっと前に掃き清められたたたきに立つのがよい。
左の隅ぐらいの席がちょうどひとつだけ空いていて、そこへするっとお邪魔です。
受け取ったどんぶりは、
水辺に浮かぶ睡蓮を連想させるようなしっとりした華やかさ。
いなだの身の薄紅色と縁取りの真朱がエッジの利いた包丁に活き活きとしている。
数滴の醤油におろし山葵の欠片をちょんと載せていただけば、一瞬こっくり甘いとさえ思う旨みがするんと消えてゆく。
やや赤味を帯びてきゅっと酢の利いたご飯に対して、〆の具合は決して過ぎない按配のよさ。
気取らず背筋のシャンとしたこういうドンブリって意外と稀少なのじゃぁないかなぁ。
ただの鉄火丼ですよと云い乍ら、仄かな酸味とあっさりした脂を含む、赤身の香気をちらりと魅せてくれるのですね。ほとんどのお客さんが丼を所望する、おひるどきの京橋「京すし」。
どうも額縁や品書きの「丼」の文字に条件反射してしまうのだけれど、次回はにぎりをいただきたいと思います。「京すし」 中央区京橋2-2-2[Map] 03-3281-5575
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