俗に骨董通りとも呼ばれているらしい、老松通りを歩く度にとっても気になる路地がありました。
通りにわらわらと看板を突き出して、歩道の一部を占拠したスタンド看板でもひとを寄せようとの強い意図が窺える光景に感心しつつ。
お好み焼きのお店「こひろ」も勿論気になるし、旬の味処を謳う「じきどう」も気掛かり。
どれどれと路地を覗くとやっぱりそこは、正真正銘の路地。
その路地の中程、「瀬戸」さんに闖入してみました。
扉を開けるとすぐ目の前が既に満席のカウンター席。
一応指を出して人数を告げると同時に、二階へと掌で階上を示す女将さんのポーズ。
階段の下でおしぼりを受け取ってから、急な階段を上ります。
まさにどなたかのお家の二階の六畳間、という風情がいい。
卓上には、幾つもの小鉢が載っていて、そこには海苔の佃煮やかつおの田麩、いわしふりかけ、ちりめん山椒、ねり梅といったご飯のお供がスタンバイ。
気の利いてる度がみるみる急上昇して、期待が高まります。
三種の定食の中からお願いしていたのは、「いわしつみれ唐揚」。
急勾配で踏み面の狭い階段ゆえ、お盆を手に上がってくるのは女将さんも大変だろうなぁと思いつつ、そのお盆を拝み受けます。
ああ、と気がつくのは、いわしつみれと唐揚げ、なのではなくて、いわしつみれの唐揚げ、であること。
揚げた表情の球形のつみれが、お盆の中央に座ったお皿に綺麗に積み上げられています。
まずお椀からと啜ると、その具沢山の粕汁が妙に旨い。
さらにわくわくしたところで(笑)、そのつみれボールを口に運ぶ。
あああ、周囲の香ばしさと鰯独特の風味・滋味が小粋にマッチしていて、これまた旨い。
たっぷりの刻み葱と山椒の粉を浮かべたタレに浸したりなんかして、むほほむほほとご飯が進むのでありますね。
ありそでなさそな、”いわしつみれ唐揚げ”。
食文化は西からくると思うことが少なくないけど、
日常の食事の中に、またまた食の街大阪の懐の深さと民度の高さを想うのでありました。
こふいふお昼を東京では意外といただき難いもンね。
老松通りの路地にある、
季節一品料理、お茶漬け・鍋物の店「瀬戸」。
夕餉の頃にもきっと、
気の利いた時季の酒肴で一献傾けられるに違いないと思います。
「瀬戸」
大阪市北区西天満4-10-17
[Map] 06-6315-8839
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