飯田橋に餃子の旨い店があると聞いてから、
幾星霜。
以前訪ねた時は、想定外の店前の行列に愕然としてスゴスゴと退散していたのです。
所用ついでにふたたび、飯田橋早稲田通り。
警察病院の跡地に沿って右に折れます。
すると、左手前に見えてくるのが、
「飯田橋大勝軒」と一度お邪魔したことのある「青葉」飯田橋店。
そしてその並びにあるのが、餃子の店「おけ似」だ。
しんと冷える中でもやっぱり、空席を待つひと影が5つほどある。
夜は当然「餃子でビール」のひと達も多いのでしょう、回転は早くありません。
30 分ちょっと待ったでしょうか。
いよいよ手が悴んできた頃に暖簾の向こうへ呼ばれました。
カウンターの隅っこに案内されて、外で待つ間ぐるぐる考えて結局素直にと導いた結論をおねえさんに告げる。
「餃子に湯麺、お願いします」。
お冷のコップに刻まれた「おけ似」の文字をしみじみ眺めてから正面に顔を上げると、観葉植物の鉢の間から硝子越しに厨房のシルエット。
湯気やら油らやがたっぷりと垂れたすっかり磨り硝子のようになっている。
厨房の熱気が伝わるようです。
お待ちかねのところにやってきた、「おけ似」自慢の「餃子」。
極薄の羽を頂いて、香ばしそうな焼色を魅せる7片の餃子たち。
辣油と酢を溶いた醤油タレにその餃子の一片をちょんとつけて齧れば、するっと肉汁が滲んで軽快な旨みが広がる。
なによりこの、軽やかさが衝撃的ですらある。
薄手の皮とクドサのないあんの組み合わせに絶妙な手練を思う。
何個でも食べれそう、とよく云うけれど、まさにそれが当てはまる餃子であります。
いいなぁ。
いーが、うーが、りゃんが、というような、注文を厨房に通す符丁を脇に聞きながら、受け取る「湯麺」のドンブリは、全体を覆う透明感が印象的。
敢えて色味を避けたようにも思う、もやしに白菜の白と柔らかな黄檗色、透明なスープ。
鳥ガラメインと思しきそのスープは、滋味深いのにこれまた軽やか。
汎用的ながらも輪郭のしっかりした麺に妙なかん水の匂いなく熟成感があって、もやし白菜と一緒に摘まみ啜ってレンゲでスープ、の繰り返しに夢中になる。
ニンニクや化調をたっぷり使っていてはこうはならないね。
いいなぁ。
人気の絶えない餃子と湯麺の、40年を越える老舗中華「おけ似」。
創業の頃にイメージするのは、満州帰りの「おけい」ばあちゃんが大陸で覚えた料理をふるまう様子か。
今度はしっかりと腰を据えて、”麦酒でやっつける「おけ似」の菜単たち”を愉しみたいな。
「おけ似」
千代田区富士見2-12-16
[Map] 03-3261-3930
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