それは、去る11月の暮れの頃。
新富の「かどや」でオバチャンのつくるお昼ご飯をお腹に収めてから、辺りをふらふらと。
すると、視線の先に、なにやら道端が華やいでいる一角がある。
半地下に「彩絵」の入ったビルの前にスタンド花が並んでいるのです。
閉じてしまったイタリアン「il DESTINO」の後に新たなお店ができた、ということらしい。
正面に廻り込み、祝い花を贈り主の札が目に留って、あれ?っと皆思う。
だって、一台づつに、谷村新司、堀内孝雄、矢沢透の名前があるんだもの。
一瞬、「アリス」の店?なんて思うも、自分達の店に花を贈ったりはしないよなぁと思い返して、はて、どんな素性の店なのだろうかと興味が沸いてきました。
ランチ営業はしていないようなので、夜の部に突撃してみる。
「師走の献立」と題した品書きには、コースの、そしてハーフコースの内容が謳われています。
それぞれが2,500 円、1,500円と、随分とリーズナブルな設定なのが、反って心配になったりもするところ。
「塩いり銀杏」に始まって、「芋づくし籠盛り」「しじみ汁赤味噌仕立て」。
「ちょこっと腹ごしらえ」は、高菜のおにぎりと出汁巻き玉子。
お酒のあてにと思っているところへ、いきなりのお食事モードでちょと戸惑う。
「若鶏ロール煮志乃多好み」は、
人参なんかを芯に巻いた鶏肉を油揚げで包んだもののスライス。
酢味噌に和えた「アボカド」に「大根牛すじ煮」「湯豆腐」と、淡々とした惣菜が続きます。
そこへ、「白州」の10年を水割りにして合わせてみたりする。
気がつけば、コースがひと通り終わっていて、中途半端な心持ち(笑)。
なにかないかと品書きの続きをみると、「我儘単品」とする数行がある。
そのラインアップは3品、「和風ローストビーフ」「八丈島青むろくさや」「仙厓カレーライス」。
うーんと唸って、〆にカレーを興じてみることにする。
やや酸味の利いた、でもお家カレーの範疇であるかなぁというところ。
ゴーヤが入っているのが、個性といえば個性か。
お愛想をお願いしている間に、「アリスの面々とはどんなご関係なんですか」と声を掛けた。
ご主人曰く、「以前、アリスのマネージャーをしていまして、それで」。
再始動をしていると聞く「アリス」だけれど、その役割にはもう別の担い手がいるらしい。
なるほど、祝い花の謎が解けました。
新富町の新店、和食の店「仙厓」。
入口右手の硝子面に走らせた筆の中にも「仙厓」の文字が窺える。
訊けば、「仙厓」というのは、江戸時代の僧侶、臨在宗 仙厓義梵そのひとに由来するそう。
それはご主人が、軽妙洒脱、ひょうひょうとして、ユーモアに富むと評される肉筆紙本・達磨図を成すお坊さんの絵の大ファンだというところから。
そうであるならば、是非仙厓師匠の世界感に習って、思わず感じ入るような軽妙洒脱にして粋な意図を含んだ世界を卓上に描いてくれるお店になって欲しいなと、そう思います。
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「仙厓」
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