そんな中の一軒が、三軒茶屋にもあると知ってやってきました。
茶沢通りを北上してしばらく行ったビル地階。
階段の手前に臙脂の暖簾を掲げているのが、琉球料理「古都首里」です。
漆の朱色とともに守礼門から正殿への首里城の景色が一瞬浮かび、宮廷料理もいただけちゃったらいいのにな、なんて期待交じりに階段を辿ります。
店内の雰囲気は、つまりは居酒屋調。
でも、雑然とした印象はなく、いろいろなところで細かく気を使っているのが窺えて、居心地は悪くなさそう。
案内されたテーブルに座れば、卓上に「めんそーれ!」とウェルカム・カード。
沖縄料理は「ぬちぐすい(命の薬)」です、という常套句をさりげなくメッセージしてくれています。
まずはやっぱり、オリオンで乾杯を。
早いところで、基本形塩味の「島らっきょ」。
あ、らっきょが苦手でもコレは大丈夫だったりするンだ、よかったよかった。
そう云いいながらシャクっと齧っては、ふたたびオリオンをくぴくぴ。
お品書きのページを捲ったら、お、「宮廷料理」と括った八品があるじゃありませんか。
少量ずつを盛り付けた「おためし五品盛り」から、昆布の炒め物「クーブイリチー」、豚肉を猪に見立てた汁物「イナムドゥチ」、そして炊き込みご飯の「ジューシーセット」まで。ありそでなさそな「田芋の唐揚げ」は、琉球版大学芋のような表情もみせるけど、ホッコリ具合と甘さが歯切れの良い軽さだ。
そして、琉球料理店「山本彩香」で強く印象に残って以来、これを見つけたら注文まずにはいられない「ドゥルワカシー」。
めくるめく琉球料理の本懐を教えてくれた「山本彩香」は、この8月一杯で閉めてしまうと聞く。
ああ、なんとも寂しいけれど、残念だけれど。
「ドゥルワカシー」は、唐揚げと同じ、田芋(ターンム)の練り物というか和え物というか。カステラかまぼこ(ここでは玉子かまぼこ)、や豚肉や椎茸を潰した田芋で練り上げた素朴なお品。
石垣で出会った、八重山膳符「こっかーら」のそれも、郷土料理「華穂」のそれも、「辺銀食堂」の「ターンムワカシー」もそれぞれに違っていたことに思い至ります。
泡盛は、今帰仁酒造の「美しき古都」からヘリオス酒造の「琉球美人」へと呑み進みます。
定番「ラフテー」と一緒に届いたのが、そう、同じ豚さん料理「ミヌダル」。
豚ロースに黒胡麻のペーストで衣に捲いた粋なヤツ。パサつき感があって、仕上げの精度は「山本彩香」の「ミヌダル」にやや劣る気もするし、形状も違うけど、頑張ってる感じもして、いいな。
ここでグラスを宮古・宮の華酒造の「華翁 古酒」に代えて、ひと味違う定番系「味噌味ゴーヤーチャンプルー」。
うん、こふいふ仕立ても悪くないゾ。
こうなりゃ、最初から気になっていたこれで仕上げてしまおうと、「イカ墨ジューシー」。あおり烏賊のイカ墨で炊いた軽くもコクのある雑炊だ。
結構満ちていたお腹に意外や、するんと入ってしまうのです。
宮廷料理さえも気軽に手軽に供してくれる、琉球料理「古都首里」。
沖縄中部出身だというホールスタッフの、朗らかさと毛深さに和んだりもして。
お土産にころんと丸いサーターアンダギー用意してくれている、そんな心意気もぷち嬉しいのです。
「古都首里」
世田谷区太子堂2-24-6 ドミー三軒茶屋B1F [Map] 03-5431-3275
http://kotoshuri.com/