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沖縄懐石「赤坂潭亭」で チムシンジ長命草ラフテー水飯豆腐よう
赤坂一ツ木通りを乃木坂方向へ進む。
周囲の賑わいが落ち着き、ミッドタウンが視界にはっきりとしてくる辺りの赤坂小前で左に折れる。
その、やや暗がりにひっそりとあるのが、今宵の宴の蓆、沖縄懐石の「赤坂潭亭」です。
お忍びや裏会合もひたりと似合いそうな、そんな雰囲気に何故かやや忍び足(笑)。木戸から入ると、そこは暗がりの足下を行灯が照らす板の廊下。
その横に個室が配されている模様。
案内に従って、階下へと進みます。
そこにも幾つかの個室が、用意されている。
やっぱり、密会や裏会合にぴったりだ(笑)。
そんな構えに対して当方、特段怪しい集いでは勿論ないので、敢えてずいっと一番奥のカウンター席に腰を落ち着けました。
沖縄でビールとなれば、やはり「オリオン」。
どもども、と乾杯をしたところに前菜のお皿が届きます。長い長い皿に並んでいるのは、合わせて七品。
ミミガーをこういう仕立てにした料理は初めてかも、の「ミミガー寄せ」に、これは泡盛にもぴったりだね、の「島豆腐味噌漬け」。
豆腐ようの紅麹に鮮やかなソースをたらりと落とした「隠元の練り豆腐よう掛け」に、「パパイヤイリチー」「ニガナ胡麻和え」「ゴーヤ黒糖漬け」、そして「鬼灯」。
ほおづきの香りを嗅いでは、ホントはもう少し熟れた香りがするのだけれど、とか、ほおづきは沖縄で採れるのかどうか、なんて話を福々とした笑顔でしてくれたのが「赤坂潭亭」アンマー、高木凛さん。
豚の肝は大丈夫かと訊かれて、全然オッケー歓迎ですレバー好物です(笑)と応じたのは、つまりはお椀「チムシンジ」のこと。
暑い時期には滋養を養わなくちゃね、という配慮から品書きに加えたと、凛さん。「チム(肝臓)」「シンジ(煎じ汁)」ということで、血抜きした肝臓を細やかなつみれにしてあり、鮑茸というぷりっとした食感のキノコを添えて澄んだ出汁に浮かべてある。
つみれに載せているのは、シークヮーサーじゃなくて、酢橘みたいだ。
清くして、かつしっかりとした出汁の旨味にレバーペーストの魅力が交叉して、レバー好きには嬉しい限り。
つみれにしてあるのが、お椀として風格を増してるね。
お造りは、浅~くシメたハタの仲間「ミーバイ酢〆」に「石垣鯛洗い」。付け合わせにこんもりと「サフナ(長命草・防風)」、鮮やかなオレンジで彩る「花甘草」に「海ぶどう」。
長命草の爽やかな苦味風味が比較的淡白なお造りに色を添えてくれる。
長命草は、沖縄料理に欠かせないものになっていくのかもね。
ヘゴ梅肉和え、谷中生姜を添えた「まんびき(シーラ)の照焼」に続いて、丸オクラ寄り添う、ご存知「ラフテー」。
おお、こんな端正な仕立ての「ラフテー」は初めてだー、と思わず口走る。
やんばる豚の「ラフテー」が、エッジがきりっとしていながら、ふっくら柔らかで、滋味厚い。
「豆腐よう」を加えてもらうと、正ちゃん帽のような硝子の蓋で包まれてやってきた。
紅麹の風味を逃がさず愉しめるようにという演出なんだね。ここで泡盛を「飛泉漱玉」から、横手の甕に見る、同じ蔵元の「瑞泉」に。
ちびちび楊枝で削っては、泡盛を舐める。
妙に尖った味わいがするヤツは邪道なヤツで、
こうして柔らかくも濃厚な風味がして欲しい。
やっぱり、泡盛に合う酒肴の筆頭でありますねー。
「もうお食事にしてよろしいですか」と訊かれて、意外とそこそこいい感じのお腹加減。
「お願いしまーす」ということで届いたのが、「水飯(すいふぁん)」と呼ぶ小さなどんぶり。タルト型で円く抜いたご飯の上に、湯掻いた海老に浅蜊、纏めたアーサが載っている。
そこへ浅蜊でひいたという出汁を注ぐという仕立て。
ぬははは、冷たい浅蜊の汁にしみじみとして、透明な磯風味が心地いいのであります。
品書きの最後の行には、「甘味 レンブ蜜煮」とあるのだけれど、残念ながらご不在のようで、この夜のデザートは、パッションフルーツ。
でもね、パッションの甘酸っぱさもすーっとすっきり口元を洗ってくれるんだ。
琉球王朝時代の宮廷料理から紐解く沖縄料理を東京・赤坂でいただける「赤坂潭亭」。どこまで正統なものかを問うよりも、食材の手当てや工夫、仕立ての妙や思い入れに素直に共鳴してしまいたい。
凛さんのお話をもっと聞きたかったな。
のむのむさん、romyさん、ご一緒ありがとー。
「赤坂潭亭」 港区赤坂 6-16-11 浜ビル [Map] 03-3584-6646 http://www.akasakatantei.com/