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活魚・串焼き「ほんま」で 概念壊す真夏の厚切り牛すき焼き満腹
大井町駅から例の横丁の線路際を往くと、
寂しげに灯りの消えた「大山食堂」の看板が視界に入る。
その先へさらに進んでいくと、コンビニの灯りの向こうに赤い看板が見えてくる。
そこが、今宵の闖入ターゲット、「ほんま」だ。
看板には、活魚・串焼きとあるけど、店先の「定番メニュー」には、まるで焼肉専門店のような”牛”メニューがあれこれ。
そして、ご存じ築地王さんからのお誘いは、「すき焼き喰いませんか」。
真夏にすき焼きとは、これ如何に。
果たしてどんな世界が待っているのでしょう。
縄暖簾を潜ると、テーブルもそしてカウンターもほとんど埋まっている。
はて、と思いながら予約の名を告げると、二階に席の用意があるという。
狭い階段を身を捩るようにして上がると、ほとんど誰かさん家の二階、という風情のやや暗い畳の間。
なぜだか窓の外はスチールのパネルで閉ざされていて、なんだかちょっと湿った閉塞感があるね。
部屋の隅にある冷蔵庫からビール瓶を取り出して、まずは乾杯。
冷蔵庫から自由にセルフで呑っちゃってくださいというシステムは、なはは、五反田「日南」の二階と同じだね。
まずやってきたのは、「牛レバ刺し」。新鮮な鶏レバに初めて出会った時の感激をふと思い出し、あそこまで繊細な食べ口ではないけれど、でもでも遜色のない澄んだ甘みが量感と一緒にやってくる牛レバだ。
例によって、岩塩を振った胡麻油でいただき、さらにはコッチの方がより味が引き立つねーと大蒜醤油にちょんとつけて。
続いて素っ気ない角皿にのって運ばれてきたのが、ここでの定番「牛ハラミ串焼き」。この厚みがいいのだよなぁと齧りつけば、期待通りの脂の甘さと溢れる旨味。
何気なくぺろんと食べちゃいそうになるけど、しっかり味わんなきゃ勿体ないぞ、っと(笑)。
ホッピーに切り替えて、あれこれつまんでいるところへ、どーーんと登場したのが本日のメイン皿。
えー?おいおいおい(笑)。大皿にどこどこと重ね盛られた肉のボリュームが、迫る。
それはなにより、すき焼きにするには大胆にも厚切り過ぎないかなぁと心配になる。
既に、茄子、白菜、人参、隠元といった野菜たちや豆腐なんかを浮かべていた電熱鍋の温度を上げて、玉子を溶いてから徐ら、その肉たちを投入する。
ちゃちゃーっと軽く火が入ったところで引き上げて、玉子を絡めて、はむっと咥える。
すると、厚みへの危惧を嘲笑うように、すいんと蕩けるではないの。ほほー、なるほど、量感を厚みで愉しめるすき焼きもあっていいじゃん、ってことなんだね。
なんだかすき焼きの概念が簡単に壊れた感じもする。
はむ、はむっ、ずる、はむ。
は~、それにしてもちょっとやっぱり、肉の量が多いよね~?
はむ、ずる、はむっ。
ほらほら、火が入り過ぎないうちに、食べて食べて。
はむ、はむ。
ほら、だから、喰えつーの(笑)。
はむ、はむむむ。
うー、苦しい、もう、入りましぇん。
なんだかもう、すき焼きなんだか鍋なんだかわかんなくなってるしー。残すのは信義に悖ると意を決して頬張った肉に咽るようになって目を白黒するご存知築地王(笑)。
いやー、苦しい苦しい。
ところが、「実は、カレーもお願いしてあるンだけど……」と予約を仕切ってくれていた氏(霞町)。
ええええー!
そしてそれは、まさか肉の量と同じくチョー大盛りだったりしないだろうな、という心配をせせら笑うが如く紛れもない現実として目の前にやってきた。およそカレーを盛ることを想定していないであろう皿は深く、そこへなみなみとたっぷりのカレーが満たされている。
いやー、だからもう、喰えなってばぁ(泣)。
ああ、ここに人間ディスポーザー(誰?)がいてくれたらなぁ。
こうなりゃ意地だと、取り皿によそって、スプーンをそこへ挿す。
ああ、この期に及んで肉エキス満載の、そしてかなり脂っこいカレーなのであります。
うう、ううう。
空腹時にこれ単品だったら、うおー旨いとガッツリ喰いできそうな気は確かにするのだけど、今はそんな状態じゃないのが残念至極。
この「和牛ハラミカレー」は、ランチに格安で提供してくれているらしいので、また昼に来なくっちゃだ。
牛のあれこれ、食肉市場直送ですよと謳う、大井町「ほんま」。
大将にご馳走さまをしてふたたび潜る縄暖簾。お腹を擦りながら歩く線路沿いの帰り道。
口々に呟くは、嗚呼お肉はしばらくいいかも、と(笑)。
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「ほんま」 品川区南品川6-8-26 [Map] 03-3471-8288